襖子からかみ)” の例文
先方は意外に思ったらしいが、無視しているように思わせたくないと思って、一人の女が膝行いざり寄って来た。襖子からかみから少し遠いところで
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
執達吏は其の産衣うぶぎをも襁褓むつきをも目録に記入した。何物をも見のがさじとする債権者の山田は押入おしいれ襖子からかみを開けたが、其処そこからは夜具やぐの外に大きな手文庫が一つ出て来た。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
と言って、小柄な人であったから、片手で抱いて以前の襖子からかみの所へ出て来ると、さっき呼ばれていた中将らしい女房が向こうから来た。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こことの間の襖子からかみの掛け金の所にある小さい穴を以前から薫は見ておいたのであったから、こちら側の屏風びょうぶは横へ寄せてのぞいて見た。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
改造後の寝殿はまだできたばかりで御簾みすも皆は掛けてない。格子が皆おろしてある中の二間の間の襖子からかみの穴から薫はのぞいていた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
南と東の戸をあけて夫人は聴聞の席にした。それは寝殿の西の内蔵うちぐらであった。北側の部屋へやに各夫人の席を襖子からかみだけの隔てで設けてあった。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
薫は明りのさしてくるのが見えたほうの襖子からかみをあけて、身にしむ秋の空を二人でながめようとした。女王も少しいざって出た。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
体裁よく言って、次の室との間の襖子からかみを命婦自身が確かにめて、隣室へ源氏の座の用意をしたのである。源氏は少し恥ずかしい気がした。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
安心ができ、寝室へ行く通りみちにはならぬ縁近い座敷の襖子からかみをよくめた上で、その向こうへしばらく語るはずの薫を招じた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この室の北側の襖子からかみの向こうに人のいるらしい音のする所は紀伊守の話した女のそっとしている室であろうと源氏は思った。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
日も暮れていったので、薫も静かに座へもどり、上着をたりなどして、いつも尼君と話す襖子からかみの口へその人を呼んで姫君のことなどを聞いた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
姫君の居間の襖子からかみの口まで送って行った。そして中の間を昨夜ゆうべはいった戸口から客室のほうへ出て薫は横になったが、もとより眠りは得られない。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
襖子からかみをあけて朝餉あさがれいに女院は出ておいでになった。絵の鑑識に必ず自信がおありになるのであろうと思って、源氏はそれさえありがたく思われた。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
平生からごく親しくお使いになる人は多くなかったので、そうした人たちだけが、そこここの几帳きちょうの後ろや襖子からかみかげなどに侍していた。命婦などは
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
縁側に近い座敷の襖子からかみをはずして、貴女たちの席は几帳きちょうを隔てにしてあった。中央の室には院の御座おんざが作られてある。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
この襖子からかみは急な用を思いついてあけたままで出て来たのを、この時分に思い出して、人に気づかれてはしかられることであろうとあわてて帰って来た。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あい襖子からかみの細めにあいた所から御覧になると、襖子の向こうから一尺ほど離れた所に屏風びょうぶが立ててあった。その間の御簾みすに添えて几帳が置かれてある。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
向こうの室は薫ののぞく襖子からかみの向こうに四尺の几帳きちょうは立てられてあるが、それよりも穴のほうが高い所にあるためすべてがこちらから見えるのである。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女は襖子からかみの所へまで送って行った。奥のほうの人も、こちらの縁のほうの人も起き出して来たんでざわついた。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
内廊下の襖子からかみの細くあいた所から、静かに中をのぞいて見ると、平生女房級の人の部屋へやになっている時などとは違い、晴れ晴れしく室内の装飾ができていて
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
襖子からかみのことだけは少し誇張をいたしまして、しまいまで皆はあいたのでないように申し上げておきましたから、もしくわしいお話を聞こうとなさいましたら
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言い、すぐ近くの襖子からかみのほうを向いている人に見せると、相手は身動きもせず、しかもおおように早く
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あるところまでよりしまらぬ襖子からかみを宮がおさえておいでになるのは、これほど薄弱な防禦ぼうぎょもないわけなのであるが、それをしいてあけようとも大将はしないのである。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
父宮の喪中にここから仏間にいるのをのぞいて見た北の襖子からかみの穴も恋しく思い出されて、寄って行って見たが、中のへやは戸が皆おろしてあって暗いために何も見えない。
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
東南の端の座敷に院はおいでになって、隣室の尚侍のいる所との間の襖子からかみには懸金かねがねがしてあった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
その女房は驚いて後ろを見返ったが、宮は恐ろしくおなりになって、北側の襖子からかみの外へいざって出ようとあそばされたのを、大将は巧みに追いついて手でお引きとめした。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
仏間になっている所とは襖子からかみ一重隔てた座敷に女王たちは住んでいるらしく思われた。
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏が座敷の中を見まわすと几帳きちょうの後ろとか、襖子からかみの向こうとか、ずっと見える所に女房の三十人ほどが幾つものかたまりを作っていた。濃い喪服も淡鈍うすにび色も混じっているのである。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
新築させたやしきへ浮舟を入れようと思っていたが、そのために家までも作ったと派手はでな取り沙汰ざたなどをされるのは苦しいことであると薫は思い、ひそかに襖子からかみを張らせなどすることを
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
北側の座敷との間も今日は襖子からかみがはずされて御簾みす仕切りにしてあったが、そちらのへやへ女房たちを皆お入れになって、院は尼宮に今日の儀式についての心得をお教えになるのであったが
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そでを放させて出ようとするのを、典侍はまたもう一度追って来て「橋柱」(思ひながらに中や絶えなん)と言いかける所作しょさまでも、おめしかえが済んだ帝が襖子からかみからのぞいておしまいになった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
皆が寝入ったころを見計らって姫君の居間との間の襖子からかみをあけようとしたが、平生は別に錠などを掛けることもなかった仕切りが、今夜はしかととざされてあって、向こう側に人の音も聞こえない。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言い、しいて促し立てておき、夫人の居室いま襖子からかみの前へまで行き
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その時に源氏は女王の室のほうへ襖子からかみをあけてはいったのである。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
少将は自身でも見るたびに涙のとどめがたい姫君の姿を、恋する男の目にはどう映るであろうと思い、よいおりでもあったのか襖子からかみ鍵穴かぎあなを中将に教えて目の邪魔じゃまになる几帳などは横へ引いておいた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尼君は隣室の襖子からかみの口へまで来て対談した。少し泣いたあとで
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)