被入いら)” の例文
「お仙や、お前は三吉叔父さん、三吉叔父さんと、毎日言い暮していたッけが——どうだね、三吉叔父さんが被入いらしって嬉しいかね」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はい、みづみなもとたきでございます、此山このやまたびするおかたみな大風おほかぜのやうなおと何処どこかできます。貴僧あなた此方こちら被入いらつしやるみちでお心着こゝろづきはなさいませんかい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今は寒くていけませんが、夏になったらわたしの処へ被入いらっしゃい。わたしどもは昼間海辺に貝殻取に行きます。赤いのや青いのや、鬼が見て恐れるのや、観音様の手もあります。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「エエ、どの位いの御滞在の御予定で被入いらっしゃいますか」
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
可笑おかしく成る時には、アハハ、アハハ、独りでもうこたえられないほど笑って、そんなに可笑しがって被入いらっしゃるかと思うと、今度は又
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
晩にはお父さんと一緒に西瓜の見張りに行きますから、あなたも被入いらっしゃい
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「ええ、被入いらっしゃりたいような様子でしたよ」とお雪は妙に力を入れて、「なんでも、停車場前の茶屋に寄っていらっしゃるんですッて」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「たしか、橋本の番頭さんが薬をしょって吾家うち被入いらしって、あの時豊世さんのお嫁さんに被入いらしったことを伺いましたっけ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『兄さんは最早もう解つたやうな顏をして居ました。獨りで歸つて被入いらつしやいツて言ひましたら、ウンなんて——』
三吉は姉の様子が好さそうなのをよろこんで、それを二人に話した。「母親さんも気を張って被入いらっしゃるからでしょうよ。私の方がかえって励まされる位です」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「奥様、斯ういふ処へ被入いらしつた丈でも、もう御癒おなほり遊ばしたやうな気分がなさいますでせう。何ですか、東京から見ますと、御陽気からして違ひますこと。」
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『母さまはキイキを癒しに被入いらつしやるんですよ。』と私が申上げましたら、『知つてるよ』なんて左様さうおつしやいまして……あれを思ふと御可哀さうで御座います。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あの」とお雪は張物する手を留めて、「そこいらまで見物に被入いらしったついでに御寄んなすったんですッて」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
是方こちらの旦那様も奥様を探して被入いらしゃる御様子ですが、丁度好さそうな人が御座いますとかッて。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
子安も歩き歩き、「なんでもあの先生が上田から通って被入いらっしゃる時分には、大変お酒に酔って、往来の雪の中に転がっていたことがあるなんて——そんな話ですネ」
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よく私は皆さんを病院の方へお連れ申します。それぢや、奥様も私と一緒に被入いらつしやい。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「正木先生は大分漢書を集めて被入いらっしゃいます——法帖ほうじょうの好いのなども沢山持って被入いらっしゃる」と先生は高瀬に言った。「何かまた貴方あなたも借りて御覧なすったら可いでしょう」
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「でも、貴方だって、小諸言葉が知らずに口から出るようですよ。人と話をして被入いらっしゃるところを側から聞いてますと——『ようごわす』——だの——『めためた』だの——」
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何でもいから、一緒に被入いらつしやい。私の店へ行つてすこし御休みなさい。」
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「さう言へば、奈何どんな兄さんが被入いらつしやるでせうねえ。」と復たお栄が言つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
れいですよ。かんではありませんよ——定屋様はこの方で被入いらっらしゃるから」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「栄ちやん、被入いらつしやいつて。」とお節は妹を呼んだ。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こんなお住居すまゐ被入いらしやる和尚をしやうさんは仕合しあはせなかたですね。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)