行方ゆくかた)” の例文
かれ最愛さいあいちゝ濱島武文はまじまたけぶみは、はるかなる子ープルスで、いま如何いかなるゆめむすんでるだらう、少年せうねんゆめにもかくした母君はゝぎみ春枝夫人はるえふじんは、昨夜さくやうみちて、つひその行方ゆくかたうしなつたが
くまでに師は恋しかりしかど、夢さら此人を良人つまと呼びて、共に他郷の地を踏まんとは、かけても思ひ寄らざりしを、行方ゆくかたなしや迷ひ、窓の呉竹くれたけふる雪に心下折したをれて我れも人も
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乳母うば入る。ヂュリエットじっと行方ゆくかた見送みおくって
あやしふね双眼鏡さうがんきやう一件いつけん印度洋上インドやうじやう大遭難だいさうなん始末しまつ其時そのとき春枝夫人はるえふじん殊勝けなげなる振舞ふるまひ、さては吾等われら三人みたり同時どうじに、弦月丸げんげつまる甲板かんぱんから海中かいちう飛込とびこんだのにかゝはらず、春枝夫人はるえふじんのみは行方ゆくかたれずなつたこと
『あら、父君おとつさん單獨ひとり何處どこへいらつしやつたの、もうおかへりにはならないのですか。』と母君はゝぎみ纎手りすがると春枝夫人はるえふじん凛々りゝしとはいひ、女心をんなごゝろのそゞろにあはれもよほして、愁然しゆうぜん見送みおく良人をつと行方ゆくかた