菜種油なたねあぶら)” の例文
勘次かんじ菜種油なたねあぶらのやうに櫟林くぬぎばやしあひせつしつゝ村落むら西端せいたん僻在へきざいして親子おやこにんたゞ凝結ぎようけつしたやうな状態じやうたいたもつて落付おちついるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
マンは、釜をきれいに洗って拭き、台所の一角にある、「荒神様こうじんさま」の神棚に供えた。菜種油なたねあぶらの入っている土器かわらけに、燈心とうしんをかきたてて、マッチで、火をつけた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
帆さきと艫に油灯がついているところを見ると、すくなくとも昨夜の六ツ半ごろまではたしかにこの船にひとのいたということは、油灯の菜種油なたねあぶらのへりぐあいを見てもすぐわかる。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
なお何か事のある時分には一万あるいは十万の燈明を上げることがある。それらはみな高価のバタで上げますので、チベットでは菜種油なたねあぶらで燈明を上げるということはほとんどないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すゝつた佛壇ぶつだん菜種油なたねあぶらあかりはとほくにからでもひかつてるやうにぽつちりとかすかにえた。おふくろのよりも白木しらきまゝのおしな位牌ゐはいこゝろからの線香せんかうけぶりなびいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その他いろいろの飾物があるのみならず、本堂の中には三千五千のバタの燈明がとぼって居るです。バタの光というものは菜種油なたねあぶらの光よりも非常に白く、ちょっとガスの火に似て余程明るいです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かれ彼等かれら伴侶なかまつては、幾度いくたびかいひふらされてごとみづおとした菜種油なたねあぶらの一てきである。みづうごときあぶらしたがつてうごかねばらぬ。みづかたむときあぶらまたかたむかねばらぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)