荒涼くわうりやう)” の例文
店はやはり主人のまはりに荒涼くわうりやうとした空気を漂はせてゐる。保吉はいつか少しづつ女のゐないことを忘れ出した。……
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よるいろにそのみどりくろずみ、可愛かあいらしい珊瑚珠さんごじゆのやうなあかねむたげではあるけれど、荒涼くわうりやうたるふゆけるゆゐ一のいろどりが、自然しぜんからこの部屋へやうつされて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ゴルキイの小説によく出てくる露西亞ロシア草原ステッペ聯想れんさうさせるやうな、荒涼くわうりやうとした原の中に工場と、工場附屬ふぞくの住宅と、貧しげな商家農家の百軒あまりがまばらに立ち並び
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
……やま地平線上ちへいせんじやう遠霞とほがすんで、荒涼くわうりやうたる光景くわうけいあたか欄干らんかんしぼつて、あみをばかり、ぱつとさばいておほきくげて、すゑひろげたのにたとへたのだらう。と、狼狽うろたへてたのである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
の『巌頭がんとうの感』は失恋の血涙の紀念です、——彼が言ふには、我輩は彼女かのぢよを思ひ浮かべる時、此の木枯こがらし吹きすさぶが如き荒涼くわうりやうの世界も、忽ち春霞しゆんか藹々あい/\たる和楽の天地に化する
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
荒涼くわうりやうけん、板三枚
梅子さん、秋のしも、枯野の風の如き劇烈なる男児の荒涼くわうりやうが、春霞はるがすみの如き婦人の聖愛に包まれて始めて和楽を得、勇気を得、進路をあやまたざることを得る秘密をば、貴嬢は必ず御了解なさるでせう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)