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茅屋
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くさや
わが
青年の名を
田宮峰二郎と呼び、かれが住む
茅屋は丘の半腹にたちて
美わしき庭これを囲み細き流れの北の
方より走り来て庭を貫きたり。
理髪所の隣に
万屋あり、万屋の隣に農家あり、農家の前には
莚敷きて
童と
猫と仲よく遊べる、
茅屋の軒先には
羽虫の群れ輪をなして飛ぶが夕日に映りたる
庭を貫く流れは
門の前を通ずる
路を横ぎりて直ちに林に入り、林を
出ずれば土地にわかにくぼみて一軒の
茅屋その屋根のみを現わし
水車めぐれり、この
辺りには
水車場多し
軌道と
直角に
細長い
茅葺の
農家が一
軒ある
其の
裏は
直ぐ
山の
畑に
續いて
居るらしい。
家の
前は
廣庭で
麥などを
乾す
所だらう、
廣庭の
突きあたりに
物置らしい
屋根の
低い
茅屋がある。
此處は
谷間に
據る一
小村で
急斜面は
茅屋が
段を
作つて
叢つて
居るらしい、
車を
出て
見ないから
能くは
解らないが
漁村の
小なる
者、
蜜柑が
山の
産物らしい。
人車の
軌道は
村の
上端を
横つて
居る。