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艷書
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ふみ
云送らんと
艷書に認め懷中しつゝ
好機もあらばお浪に渡さんものと來る
度毎に
窺ひ居けれ共其
間のあらざれば
空しく
光陰を
殊に
我れ
庭男などに
目の
付く
筈なければ、
最初より
艷書と
知りては、
手に
觸れ
給ふか
否か
其處まことに
危ふし、
如何にせんと
思案に
苦みしが、
夫れよ、
人目にふるヽは
何の
道おなじこと
奧へ通さぬは如何なる
譯なるや知つてならば
咄すべしと尋ねければ
流石は
丁稚のことゆゑ
酒肴に
釣れ其事柄は
委き譯を知ね共先生よりお浪さんへ
艷書を
此思ひ
通じさへせば
此心安かるべしと
願ふは
淺し、
入立つまヽに
欲は
増さりて、はてなき
物は
戀なりとかや、
敏はじめての
艷書に
心をいためて、
萬一落ち
散りもせば
罪は
我れのみならず
定め
乳母に相談せんものと
密に乳母を呼て彼の
艷書を
封の儘に見せければ乳母は大いに打驚き是は此儘に
捨置難し旦那樣へ御見せ申さんとて立んと
爲るを