こべり)” の例文
底は一枚板の平らかに、こべりは尺と水を離れぬ。赤い毛布けっとに煙草盆を転がして、二人はよきほどの間隔に座を占める。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
といううち勇助は遂に船まで泳ぎ附けこべりへ手を掛けて船をあがろうとしましたが、上ってまいればたちまちに勇助のために斬殺きりころされますので、丈助がさびた一刀を引抜き、勇助の頭脳あたま割附わりつける。
熟練じゆくれん漁師れふし大洋たいやうなみまかせてこべりからなはいだつぼしづめる。なはさぐつてしづめたあか土燒どやきつぼふたゝこべりきつけられるとき其處そこには凝然ぢつとしてたこあしいぼもつ内側うちがはひついてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こべりから足を垂らすと、しばらくしてちくりと刺す物があるから、平藻ひらもとげだらうと見ると、小さな尾細をぼそである。足のまはりへ一寸か七八分位のがつて來て、ちよつと突つついてはちよつと放れる。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「その鼻を廻ると嵐山らんざんどす」と長いさおこべりのうちへし込んだ船頭が云う。鳴るかいに送られて、深いふちすべるように抜け出すと、左右の岩がおのずから開いて、舟は大悲閣だいひかくもとに着いた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
居眠をしていた老人は、こべりから、ひじを落して、ほいと眼をさます。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)