老若ろうにゃく)” の例文
ゆえにこれは老若ろうにゃくを問わず誰しも経験あることと信ずる。凡人の習いと言わんか、僕もこの例にたがわず四十歳前後のころよりしばしば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と、夜の酒もりにも彼女をじえた。そこには、奥の侍女こしもと、家族の老若ろうにゃく、重臣たちも共になる。いかにも、春の夜らしい人々であった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとなしく手をとられて常人のごとく安らかに芝生しばふ等の上をあゆむもの、すべて老若ろうにゃく男女なんにょあわせて十人近い患者のむれが、今しも
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こは一般に老若ろうにゃくいたく魔僧を忌憚いみはばかかり、敬して遠ざからむと勤めしよりなり、たれ妖星ようせいの天に帰して、眼界を去らむことを望まざるべき。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また右手の小高き岡に上って見下ろせば木の間につゞく車馬老若ろうにゃく絡繹らくえきたる、秋なれども人の顔の淋しそうなるはなし。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
つまり奈良の老若ろうにゃくをかつごうと思ってした悪戯が、思いもよらず四方よもの国々で何万人とも知れない人間をだます事になってしまったのでございます。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奇怪至極の邪法を使いまする、これを召捕らんことには、仮令たとい在家の老若ろうにゃくを何千人何万人召捕らるるとも、邪法の種を絶やすことはできんと思います
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
阿部一族は討手の向う日をその前日に聞き知って、まず邸内をくまなく掃除し、見苦しい物はことごとく焼きすてた。それから老若ろうにゃく打ち寄って酒宴をした。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
長老以下東堂西堂あるいは老若ろうにゃく沙弥喝食しゃみかっしきの末々まで、多くは坂下さかもと山上やまのうえ有縁うえん辿たどって難を避けておられる模様でございましたので、その御在所御在所も随分と探ねてまわりました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
老若ろうにゃくも差別のない無常の世がこれによってまた思われて悲しまれるのであった。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「——そんな年寄りくさいことは知らない、と云いたいところだろう、しかしこれはとしの老若ろうにゃくにかかわらず、そういう気持があるかないかのはなしだ、さあ、よく嗅いでみるがいい、いま匂っているのはもくせいの花だぞ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
老若ろうにゃくの外の市民は逃げたり隠れたりしてはいけないのである。空中襲撃の防禦は軍人だけではもう間に合わない。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
里近くなると、田や畑に働いている人影は、遠く老公のすがたを見る者も、近く行き老若ろうにゃくも、みなあわてて土下座した。——老公はいちいち馬の背から
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
部落の老若ろうにゃくはことごとく、おきて通り彼を殺して、騒動の罪をつぐなわせようとした。が、思兼尊おもいかねのみこと手力雄尊たぢからおのみことと、この二人の勢力家だけは、容易に賛同の意を示さなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
長老以下東堂西堂あるひは老若ろうにゃく沙弥喝食しゃみかっしきの末々まで、多くは坂下さかもと山上やまのうえ有縁うえん辿たどつて難を避けてをられる模様でございましたので、その御在所御在所も随分と探ねてまはりました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
それに次いで、ほとんど一村の老若ろうにゃく男女が、ことごとくその声を聞いたのは、むしろ自然の道理である。貉の唄は時としては、山から聞えた。時としては、海から聞えた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それほどそこには、老若ろうにゃくの武将がいっぱいにいて、何やら騒然と、思い思いな声をもらしていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏡の前に裸で立ちはだかって頬をふくらしてみたり腹をでてみたりしている人の顔にも、湯槽ゆぶねの水面に浮んでいるデモクラチックな顔にも、美醜老若ろうにゃくの別なく、一様に淡く寛舒レラクセーションの表情が浮んでいる。
電車と風呂 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私はまだ火をともさない店先の薄明りで、あわただしく表紙をはぐって見ました。するとまっ先に一家の老若ろうにゃくが、落ちて来たはりに打ちひしがれて惨死ざんしを遂げる画が出て居ります。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見送りにかたまっていた留守居の老若ろうにゃくは、われを忘れて、土下座から声をあげた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴賤老若ろうにゃくの嫌いなく、吾が摩利の法門に帰依し奉ったものと見える。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)