網羅もうら)” の例文
またこの両三日中の訪問者には、京都の名だたる貴紳きしん網羅もうらしているといってよい。菊亭晴季きくていはるすえを始め、徳大寺、飛鳥井あすかい鷹司たかつかさの諸卿。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最も有為な男女が網羅もうらされているから、諸君は必要な人間を幾人でも本部に申告して諸君の目的に使用することができる。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
当時徳富蘇峰の『国民之友』は政治を中心としてあまねく各方面の名士を寄書家に網羅もうらし、鬱然うつぜんとして思想壇に重きをなした雑誌界の覇王はおうであった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
牙彫の方は牙角介甲部となりその他種々部が出来て、今では十何部となってすべてを網羅もうらしたのであるが、最初は牙彫だけで、木彫は一両人であったのです。
昨年独逸人クルトの出版せる書籍中には今日まで我邦人わがほうじんすらかつて見ざりしほどの珍品をも網羅もうらし尽せり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以上の理想を実現させるためには新聞社はあらゆる実務や学術技芸はもちろん一般思想上の各方面について第一流の人たちを記者として網羅もうらしなければならない。
一つの思考実験 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一千にあまる来賓はすべての階級を網羅もうらし、その視線のことごとくそそがれている舞台中央には、劇場主川上音二郎が立って、我国新派劇の沿革から、欧米諸国の劇史を論じ
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また日本につぽん支那しなその東洋とうよう美術品びじゆつひんあつめた博物館はくぶつかんだとか、世界各國人種せかいかつこくじんしゆ土俗品どぞくひん網羅もうらした博物館はくぶつかんだとかゞこの大都會だいとかいかざつてをりますが、ロンドンやパリの大博物館だいはくぶつかんくらべては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
レコードは代表作の優秀盤きわめて少数に限定して、極力網羅もうら主義を避けた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
まったく世界にほこるべき花であるがゆえに、どこか適当な地を選んで一大花ショウブ園を設計し、少なくも十万平方メートルぐらいある園をもうけて、各種類を網羅もうらするハナショウブを
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
日本にある基督教界の最高の知識をほとんど網羅もうらした夏期学校の講演も佳境に入って来た。午前と午後とに幾人いくたりかの講師に接し、幾回かの講演を聴いた人達はチャペルを出て休憩する時であった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
右側にはやはりモデルの一人で発起人の佐々木と土井。その向側にはおもに新聞雑誌社から職業的に出席したような人たちや、とにかくかなり広く文壇の批評家といった人々を網羅もうらしたかんがある。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「入りませんか? 在野ざいやの秀才を網羅もうらする会です。僕が推薦します」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此調査會このちようさかい會員かいいん全部ぜんぶ日本人につぽんじんであつて、地震學ぢしんがく物理學ぶつりがく地質學じしつがく地理學ちりがく土木工學どぼくこうがく建築學けんちくがく機械工學きかいこうがくとう地震學ぢしんがく理論りろんならび應用おうようかんした學問がくもんおいてわがくに第一流だいゝちりゆう專門家せんもんか網羅もうらしたものであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
百科辞典のように網羅もうらされているといっても過言ではない。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仮に小説を中心とするにしても各方面の作家を網羅もうらする計画で、硯友社叢書とするツモリはなかったのだ。
そして別格ではあるが、徳川家康とを加えしめれば、まず日本の中心的人物は網羅もうらされているといってもさしつかえはなかろう。その中においての秀吉である。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ全部の作曲家を網羅もうらすることは、本書のくわだてにおいては無意味に属するので、それらの大部分は歌劇作曲家並びに現存作曲家の全部と共に、ことごとく本記に割愛かつあいし、ここに音楽史的に瞥見べっけんして
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)