突慳貪つっけんどん)” の例文
そこに来て働く女中たちを一人ひとり一人突慳貪つっけんどんにきびしくたしなめた。しまいには一人として寄りつくものがなくなってしまうくらい。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
其様に出たければあなた一人で勝手に何処へでもおいでなさい、何処ぞへ仕事を探がしに御出おいでなさい、と突慳貪つっけんどんに云うンです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
常連のお客でもあらかじめ申込を聞いていない限り、這入はいれるかどうか見たら分るだろうと云う顔をして、突慳貪つっけんどんに断ってしまう。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
素戔嗚すさのおはそろそろれ出しながら、突慳貪つっけんどんに若者のこいしりぞけた。すると相手は狡猾こうかつそうに、じろりと彼の顔へ眼をやって
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「サア一向に……。私、そんな事はてんで存じません」と普光尼は、いきなり突慳貪つっけんどんに云い放って、ふと首を向け変え夜具の襟に埋めてしまった。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
有名な銭形の平次が来ずに、少し好人物らしい子分の八五郎が来たのが、佐吉のしゃくにさわったのでしょう、物の言いようが少しばかり、突慳貪つっけんどんです。
今までの突慳貪つっけんどんに引換えて訴えるような声で言い出したから、七兵衛もおかしくもあり、かわいそうにもなりました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのくせ、ひどく傲慢で、ひどく突慳貪つっけんどんだ。夜など、タオルの寝巻を着たまま、そのへんを歩き廻つたりする。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「なんだか、おっ母さんら——」とおせきは突慳貪つっけんどんに叫んで、ヨシ子の枕頭からその見るに堪えないものを追いのけるように、自分の身体をぐいと持って行った。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
「いますよ」お客さんでなかった腹立ちからか、突慳貪つっけんどんな声だ。それなり知らん顔をしているのに
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
「おたべよ」と突慳貪つっけんどんにいって、少し身を退き、立ったまま流しめに二人の方を見おろしていた。皿の中にはうまそうな昆布巻こんぶまきや、たつくりや、まだ何かが一ぱいあった。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「神田の方ですよ」いつもお竜ちゃんと仲の悪い佐吉が、私に代って突慳貪つっけんどんな返事をした。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
突慳貪つっけんどんなように云った。、問いそそこに人あるに、涙堪えず、と言うのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私みたいな妙ちきりんなお客に対する給仕の待遇すこぶる突慳貪つっけんどんを極めてまるでどこかの外交員でも戸惑いして来たかのような扱いであったから、私は内心怒りが勃発ぼっぱつして人なきを見て
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と権右衛門は突慳貪つっけんどんに、新九郎の背中を小突いてまた向うへ引ッ立てて行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょろ松は、檐のはしへ手をかけて廂の下をのぞきこみながら、突慳貪つっけんどん
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けれど、品物を取り出すひまもなく、きっぱりと突慳貪つっけんどんに私は断られた。
喜平は突慳貪つっけんどんに言って、冷めかけた紅茶をいっきに飲み干した。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
計算台を前にして腰掛けていた中老が突慳貪つっけんどんに訊き返えした。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると総江は台所から突慳貪つっけんどんな声を絞つて駄夫に呼びかけ
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「何しに来たの」と母は突慳貪つっけんどん一言ひとこと
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「なに、鍵が?」と検事は、それと創紋との間に起った矛盾に、愕然がくぜんとした様子だったけれども、法水は依然熊城から眼を離さず、突慳貪つっけんどんに云い放った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「どうするんだかよ」と再び彼女は突慳貪つっけんどんにどなった。「隣り近所の義理欠けっちう肚なのかよ。いつまでいつまで、ぷかりぷかり煙草ばかり喫んでけつかって……」
おびとき (新字新仮名) / 犬田卯(著)
仁右衛門は突慳貪つっけんどんにこういい放った。彼れの前にあるおきては先ず食う事だった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
私はそれが何か末弘春吉のせいみたいにも思われ「パイ一は、どこでやります。あいているところあるかしら」とひどく突慳貪つっけんどんに言い、言ってから、ごめんごめんと弱気にあやまる気持で
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
突慳貪つっけんどんに言っているけれど無邪気に聞えて、おのずからおかしい感じがします。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それだけ一層そう見えるのかも知れないが、私にかなり突慳貪つっけんどんな返事をした。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
杜子春は不平そうな顔をしながら、突慳貪つっけんどんにこう言いました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その言葉は、米友としても突慳貪つっけんどんであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何処まで?」中から突慳貪つっけんどんな声がした。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いかにも突慳貪つっけんどんにその声はほざかれた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)