社殿しゃでん)” の例文
石のとりいをくぐって、しばらくいきますと、社殿しゃでんの前に、石のコマイヌが石の台の上に、ぶきみな猛獣もうじゅうのようにうずくまっていました。
夜光人間 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
徳兵衛は、鎮守様にそなえてある、御馳走を腹いっぱいに食べ、酒に酔っぱらって、社殿しゃでんゆかの下に眠っていましたが、ふと眼を覚ましました。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
で、三浦家みうらけではいつも社殿しゃでん修理しゅうりそのこころをくばり、またまつりでももよおされる場合ばあいには、かなら使者ししゃてて幣帛へいはくささげました。
それが情けなく、見すぼらしく、雑木ぞうきがちょぼちょぼとしげっているばかりで、高くもない社殿しゃでんむねが雑木の上に露出ろしゅつしているのだ。自分はまた気がおかしくなった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
社殿しゃでんの後に駈けこんで、そこでおずおず、うしろをふりかえった。怪しい男は、見えなかった。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
華表とりいの形や社殿しゃでんの様式も寺の堂宇どうう鐘楼しょうろうを見る時のような絵画的感興をもよおさない。いずこの神社を見ても鳥居を前にした社殿の階前にはきまって石の狛犬こまいぬが二つ向合いに置かれている。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして、かぜは、ゴウゴウとえだがさわぐありさまを想像そうぞうし、あめのふるは、おまいりするものもない、ぬれた社殿しゃでん屋根やねにえがきながら、どうぞわたしたすけたまえとおがみました。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
向こうの社殿しゃでんがボンヤリと見わけられるばかりで、そのほかは、一面に黒いまくを、ひきまわしたようです。
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
照準手と、測合手そくごうしゅとは、対眼鏡アイピースから、始めて眼を離した。網膜もうまくの底には、赤くゼロと書かれた目盛が、いつまでも消えなかった。少尉はスタスタと、社殿しゃでんわきへ入って行った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
社殿しゃでんの床下からはい出してきたばかりで、頭には蜘蛛くもまでひっかかっていました。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そこで彼は、方々探し廻って、結局社殿しゃでんの床の下を隠れ場所に選びました。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
賢二君のおとうさんは、その社殿しゃでんの縁がわにでも、おきざりにされるのでしょう。そんなに寒い気候ではありませんから、かぜをひくようなこともないでしょうが、賢二君は心配でたまりません。
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「オーイ」社殿しゃでんわきで、元気な返事があった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八幡さまの社殿しゃでんの前に、うすぐらい常夜灯じょうやとうが立っているのです。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)