破壊はかい)” の例文
旧字:破壞
会衆は恍惚こうこつとしてかれの声をきいていた、それはきわめて大胆で奇抜で、そうして斬新ざんしんな論旨である、偶像破壊はかい! 平等と自由! デモクラシーの意義!
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もし加害者が某検校にあらずして某女師匠であったとすれば器量自慢までが面憎つらにくかったに違いないから彼女の美貌を破壊はかいし去ることに一層の快味を覚えたであろう。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、あまりきゅうなために調子ちょうしくるって、片側かたがわ店頭てんとうんで、ガラス破壊はかいしたのです。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間の個性はそれで全く破壊はかいされると同時に、人間の不幸もそこから起らなければなりません。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ああ、今にも、今にも、おそろしい音をたてて、ドアが破壊はかいされるのではないでしょうか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大衆青年というものは、どんなに思慮しりょがあるように思えても、いったん反抗の精神にかりたてられると、どこにいくかわからないし、たいていの場合、破壊はかいに終わるものだからね。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
退学ということが両親兄弟を極端きょくたんに失望せしめ、一家将来の生活上に困難を来たし、一方には自分の栄誉えいよそれにともなう希望などが、根底より破壊はかいせらるるように考え来たり候えば
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ただ、じぶんの家でも父が戦争にゆくということで肩身かたみがひろかったのだ。一家そろっているということが、子どもに肩身のせまい思いをさせるほど、どこの家庭も破壊はかいされていたわけである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
実業を一纏ひとまとめに纏めて攻撃のまととなし、反動的に太古の仙人生活を主張したり、あるいは私産しさん破壊はかいして共同主義を唱えたりしやすくなり、またかくのごとくする者は、いかにも精神的なる人物
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いや、かなりひどく破壊はかいしているよ。塔なんか、半分ぐらい、どこかへとんじまっているよ。それに建物が、めちゃめちゃだ。ほら、こっちがわにも大穴があいているよ。落雷と同時に、中で爆発を
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
サクラ号はめちゃめちゃに破壊はかいされて、大小数限かずかぎりもない木片は、落花のごとく砂上にちっていた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
変えてしまったとしたらそう云う人間はもう春琴ではない彼はどこまでも過去の驕慢きょうまんな春琴を考えるそうでなければ今も彼が見ているところの美貌びぼうの春琴が破壊はかいされるされば結婚を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
破壊はかいしおわった断片だんぺんの一をのこしてどうするものか、のこったおれだってこまる、のこされた社会もこまるだろう、この一断片だんぺんをどうにかしてくれ、おれはどうしてもこの病院を
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そして、たくさんな人間にんげんにましたことは、もうみんなのっていることだとおもいます。いままでうごいていた汽車きしゃはトンネルやレールが破壊はかいしたために、もう往来おうらいができなくなりました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
暗殺終了後しゅうりょうご、午前九時ごろに、トラック三台に分乗した叛軍の一部が、「国賊こくぞく朝日を破壊はかいする」とさけんで社内に乱入し、印刷局の活字ケースなどをめちゃくちゃにひっくりかえしたそうである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しからばとていわゆる社会党(わが輩はあえていわゆるという文字を使う)の主張するように、現今の社会を目茶々々めちゃめちゃ破壊はかいしようというごとき簡単な案では、労働問題も社会問題も解決できない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
キューポラは爆発して熔鉄ようてつが五百メートル四方にとび散ったということです。この暴動の群衆の中に、奇怪なる人造人間ロボットが多数まじっていて、いずれも挺身ていしん破壊はかいに従事したということです。次に命令です。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つ人といえばとかく外部の敵に勝つように思わるるが、その外に障害物を一そうする人、もしくは破壊はかいする人と思われる。また野蛮人やばんじんの社会においては、破壊する人が一番の強者として尊敬される。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
したがってなつかしく忘れられないこの小さな村の安静も、この県道のために破壊はかいされてしまっていやしないか。そう思って見ると、県道の左右についてる、おのおのの家に通う小路こうじの見すぼらしさ。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)