真四角まっしかく)” の例文
旧字:眞四角
かばかりなる巨象の横腹をば、真四角まっしかくに切り開きて、板を渡し、ここのみ赤きせんを敷詰めて、踊子が舞の舞台にいたし候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
家には幅の広い階子段はしごだんのついた二階があった。その二階の上も下も、健三の眼には同じように見えた。廊下で囲まれた中庭もまた真四角まっしかくであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大雨たいうか何かのために突然真四角まっしかくな大きな横穴が現われ、何処どこまで深くつづいているのか行先が分らぬというので
時に、当人は、もう蒲団ふとんから摺出ずりだして、茶縞ちゃじまに浴衣をかさねた寝着ねまき扮装なりで、ごつごつして、寒さは寒し、もも尻になって、肩を怒らし、腕組をして、真四角まっしかく
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無地のつむぎの羽織、万筋のあわせを着て、胸を真四角まっしかくに膨らましたのが、下へ短く横に長い、真田さなだ打紐うちひも
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それからびくに入れてある、あのしめじたけが釣った、沙魚はぜをぶちまけて、散々さんざ悪巫山戯わるふざけをした挙句が、橋のつめの浮世床のおじさんにつかまって、額の毛を真四角まっしかくはさまれた
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わし卓子テイブルの向いに、椅子を勧められて真四角まっしかくに掛けたのじゃが、硝子がらす窓から筑波山の夕日がして、その生理学教室を𤏋ぱっと輝かした中に、国手のわかい姿が、神々しいまでに見えた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一ツ曲って突当りに、檜造ひのきづくりの玄関が整然きちん真四角まっしかくに控えたが、娘はそれへは向わないで、あゆみの花崗石みかげいしを左へ放れた、おもてから折まわしの土塀のなかばに、アーチ形の木戸がある。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と雨戸を離れて、肩を一つゆすってこうとする。広縁のはずれと覚しき彼方かなたへ、板敷を離るること二尺ばかり、消え残った燈籠とうろうのような白紙しらかみがふらりと出て、真四角まっしかくに、ともしび歩行あるき出した。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書き判を、こうの、こうの、こうこう、こう! でもござりませんければ、朱肉を真四角まっしかく、べたりでもござりません。薄墨でな、ひょろりとてのひらを一ツしました、これが人間でござりません。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お夏は、真四角まっしかくに。但しひょろひょろと坐った愛吉の肩をおして
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)