由良ゆら)” の例文
「そんなのぢやありませんよ——今日は飯田町のお由良ゆらと一緒に龜戸の天神樣へ藤を見に出かける約束で、朝早く誘ひに行くと——」
まったくの暗闇合戦で、この市街戦では、新田の重臣、船田ノ入道義昌が戦死し、千葉ノ介高胤たかたね由良ゆら新左衛門なども、ちまたに仆れた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万葉集の歌「うらうらと照れる春日に雲雀ひばりあがり心悲しも独し思へば」や「いもがため貝を拾ふと津の国の由良ゆらみさきにこの日暮しつ」
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
越川斎宮の毒舌にはよくたとえ話が出る、いつだったか、由良ゆら正七郎という若者が、たび重なる乱暴のあげく原小一郎をった。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お園が七ツのおりにその新助が「由良ゆらの港の山別れ」を教えた。ある折、一段語りおえて、親たちを嬉しがらせたあとで
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かつて『大和物語やまとものがたり』の蘆刈話あしかりばなしの元の形かと考えてみた、近江おうみ由良ゆらさと竈神かまどがみ由来譚ゆらいだんなども、袋中たいちゅうの大徳は是を事新ことあたらしく書き伝えたけれども
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
芝居は大概年に二回、五月と正月とに催されるので、その時分にこの島へ渡れば、洲本、福良、由良ゆら志筑しずき等の町をはじめ、至る所の在所でやっている。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
海岸を東へ往って、野根山のねやまと云う山を越えると阿波あわの国になります。阿波から船で由良ゆらを渡って往きます。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
江戸の旗本の家に、かんむり若太郎という十七歳の少年がいた。さくらの花びらのように美しい少年であった。竹馬ちくばの友に由良ゆら小次郎という、十八歳の少年武士があった。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
して居る様子は「にわか」の由良ゆらさんを十倍したほど下品に滑稽で間抜けに見えた。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
厨子王が登る山は由良ゆらたけすそで、石浦からは少し南へ行って登るのである。柴を苅る所は、ふもとから遠くはない。ところどころ紫色の岩のあらわれている所を通って、やや広い平地に出る。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから数日たって、机を並べている由良ゆらという男から井上君の噂を聞いた。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
掻き彈くや 由良ゆら
この由良ゆらおにのいとほしさ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「そんなのじゃありませんよ——今日は飯田町のお由良ゆらと一緒に亀戸かめいどの天神様へ藤を見に出かける約束で、朝はやく誘いに行くと——」
帆は切り裂かれても、船は運よく、由良ゆらみさきにも乗りあげずに、鯉突こいつきの鼻をかわして、狂浪に翻弄ほんろうされながら外海へつきだされていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、眼を塞がれた儘大口を開いて怒鳴り立て、「由良ゆらさん」のように両手を擴げて歩み出します。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これはこの山の神がまだ人間の美しいお姫様であった頃に、丹後の由良ゆらという所でひどいめにあったことがあったから、そのお怒が深いのだといっておりました。(東遊雑記その他)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宮崎が舟は廻り廻って、丹後の由良ゆらの港に来た。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
湧井郷わくいごう博奕ばくち打ち——表稼業は福知山から積出しの船株持ち由良ゆらの伝吉の荒格子へ飛び込んで来たのは、馬子の権十ごんじゅうであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
氣性者のお由良ゆらは夜歩きなどは何んとも思つてはゐなかつたのでせう。
すなわち由良ゆら女良めら及び福良ふくらである。右の内ユラとメラとはまだ意味がよく分らぬが、福良は日本語のふくれると言う語と語原を同じくするもので、海岸線の湾曲している形状に基いたものと思う。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それと同じように水の動揺によって平らげた岸の平地を由良ゆらとか由利ゆりとかいっている。すなわちユラグ、ユルなどという言葉が転じたのである。それから山中で少しく平らな所をナル・ナロと呼ぶ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
由良ゆらが殺されて御用聞が來たと聽いて、唯もう顫へ上がつてしまひましたが、昨夜宵のうちにお由良が訪ねて來て、豫ての打合せの合圖で路地の外に誘ひ出され、ほんの二た口三口話をしたつきり