環境かんきょう)” の例文
時代も環境かんきょうも、また戦争一本によってうごいていたときだったので、風に吹きまくられるようなあわただしい気持で、大陸へ従軍したり
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
かれらの血を染めているのは、何といっても過去の社会環境かんきょうであり、軍国主義的指導者によって植えつけられた思想であった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ある人びとは、保護色性ほごしょくせいの動物のように、じき新しい環境かんきょうに同化されてしまう。で、藤井先生も、半年ばかりのあいだに、すっかり同化されてしまった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
はしらにも、ふるこけあつしてり、それがちりひとつなき、あくまできよらかな環境かんきょうとしっくりってりますので、じつなんともいえぬ落付おちつきがありました。
生活環境かんきょうが安定しているのとで、非常に面白味のある玩具が、或る地方には今なお製作されている処もある。
土俗玩具の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
彼等の愛人同士は、周囲に多くの人々が住んでる環境かんきょうに居て、しかも無人島に居る二人だけの会話を会話し、二人だけの生活を自由に享楽きょうらくしていたのであった。
きっとこれは環境かんきょうがこんな風にさせるのだろうと、実枝は恐ろしい思いでその顔を見つめた。それほどの思いを妹に与えているとも知らずにミチはしゃべりつづけた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
このあたりを取り巻いているものは、ひろびろとした荒寥こうりょうたる環境かんきょうばかりでした。からびた褐色かっしょくのヒースと、うす黒くげた芝草しばくさが、白い砂洲さすのあいだに見えるだけでした。
元来私自身が大物おおものになり得ない性質をもち、同時に小物にもなり得ない性質をそなえ、余程恵まれた環境かんきょうでなければ、利用価値のない人間なのだが、博雄はこの小物性を特にもつことは
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
雪のような綺麗きれいなものが、こういう所が好きだというのは、随分不思議であるが、結構育つところをみると、案外この環境かんきょうが適しているのかもしれない、もちろんもっと実験室を整理して
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
が、結局持前の陽気好きの気性が環境かんきょうに染まって是非に芸者になりたいと蝶子に駄々だだをこねられると、負けて、種吉は随分工面した。だから、つらい勤めもみな親のためという俗句は蝶子に当てはまらぬ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
この気持を明かにするためには、十六年振りで長男の俵士ひょうじが生れたときの私の環境かんきょうがどんなものであったかということを先ず説明しなければならぬ。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
おたがいは今どういう環境かんきょうにおかれているのか、それをみんながはっきり知っておく必要がある。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼女といっしょに巣立すだった早苗たちは、もう未来への羽ばたきを、それぞれの環境かんきょうのなかで支度したくしている。将来への希望について書かせたとき、早苗は教師と書いていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
一体花火は暗い所によくゆるものであるから、今日は化学が進歩して色々のものが工夫されているが、同時に囲りが明るくされているので、かえってよく環境かんきょうと照映しないうらみがある。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
ただ環境かんきょうのおかげで、神経質でなくなったことは拾いものだ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
特殊とくしゅな教育環境かんきょうにおいて練りあげたものを、世間という普通ふつうの社会環境においてためそうというのが主目的であったが、また近県在住の第一回以来の修了者しゅうりょうしゃたちと親交を結び
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そういう環境かんきょうがいかにもどかしく、悲しく、いきどおろしいものであるかということを、お前は充分理解りかいするであろう。お父さんの存在はジャーナリズムによって、ことごとく遮断しゃだんされた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)