ことわ)” の例文
不幸とやいわん、不便とや申すべき。されども五倫の道筋も相応に心掛けて、君臣父子のことわりもたがえざるはありがたきことならずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かよわい婦女子でなくとも、俯して五丈に余る水面を見、仰いで頭を圧する十丈に近い絶壁を見る時は、魂消え、心おののくもことわりであった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
鈎をおろすにりて、大事とること総て此の如くなれば、一旦懸りたる魚は、必ず挙げざる無く、大利根の王と推称せらるるもことわりなり。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
また人ほかの物を見ず、たゞこの信によりてことわらざるをえざるがゆゑに、この物即ちあかしにあたる。 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
小西屋へ一度掛合吾儕わしら身體からだの明りの立やうに何卒どうぞなされて下されませとことわせめたるお光の述懷じゆつくわい無實むじつおちいり樂みし赤繩せきじようこゝに絶しと知ぬは憐れといふもおろかなりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
志呂足は山の神の行者で、病気を治し、悪魔疫病をはらい、吉凶禍福を占う。バカに人の出入りが多いな、と思ったのはことわりで、日中は山の神の信者が相当数訪れるのである。
われはさきの日即興の詩を歌ひしとき、この人のたのしみ聽けるさまなりしをおもひ出でゝ、その故をたづねしに、あやしとおもひ給ひしもことわりなり、君の面を見、君の詞の端々を聞きて
水のごとつめたう流れしたがひつことわりのままにただに生きゆく
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
思ふ道にまよふとか云ひて子をいつくしむ親の心はかみ將軍よりしも非人ひにん乞食こじきに至る迄かはる事なきことわりなり其時また上意に芝八山は町奉行の支配しはいなりとて越前我意がいつのり吟味を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もすべきに御不運にて御早世ごさうせいなりしは返す/″\も殘念ざんねんなりとひと泣悲なきかなしむもことわりとこそきこえけれ扨も八代將軍には或時御側御用おそばごよう取次に御尋おんたづね有やうは先年せんねん勢州せいしう山田奉行を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)