狼火のろし)” の例文
彼等は、上野の山で解散したデモのくずれが、各所で狼火のろしのような分散デモを行うことを、かくも戦々兢々と恐怖していたのである。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そらこが狼火のろし……そして最後さいご武運ぶうんいよいよきてのあの落城らくじょう……四百年後ねんご今日こんにちおもしてみるだけでも滅入めいるようにかんじます。
誰も、訪ねては来ないという事がわかったのでスミスといささか面喰らったアンガスとは狼火のろしのように昇降機エレベータへ飛乗って最上層へ到着した。
隊列を整えて馬橋まばしから南へみちをとり、中野で銃口つつぐちを城に向け、三十ちょう一時に放発して、君臣手ぎれの狼火のろしに代えた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
やがて、いつもそうなのだが、じんは母の手をのがれて外へとびだし、そこでたちまち叛逆はんぎゃく狼火のろしをあげる。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
幕府討て! 大義にくみせよ! の最後にして最初の狼火のろしをあげるしめしあわせをすることになっている。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玉割たまわり(実質弾の直径と口径の比率)も出合であい(照準線と膅軸線とうじくせんとが交叉する一点にたいする砲口からの長さ)もあったものではなく、竹筒でも事はすむ狼火のろしの打揚筒を
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
狼火のろしがあがったら、しかし、ことによると、燃えきらないかもしれませんね、今のところ民衆は、あんな煮出汁だしとりふぜいの言うことには、あまり耳を貸しませんからね」
それは明白なる時流への叛逆であり、併せて詩の新興を絶叫する最初の狼火のろしであつたのだ。
「なるほど、この山は要害の山、狼火のろしを上げて合図をするに都合のよかりそうな山だ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところが暗くなってから従卒が来て、沖に燈火があらわれ、狼火のろしが見えたと報告した。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
夜がふけて、それがすむと燃えているたきぎを狼火のろしのように空中高く投げつけた。それは池に落ちてジュウジュウ音をたてて消え、われわれは不意に真の闇につつまれて手さぐりするのであった。
燃して、狼火のろしがわりに煙をあげることにして下さらぬか
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「は、まさしく合図の狼火のろし
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「その偉業が成る前には、蜂須賀家ぐらいの大名、三家や四家は、狼火のろしがわりにケシ飛ぶであろう」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おごそかなほどしずかに、——そこからこちらへ、幾千万里の距離をこちらへ、この国のこの城下町へ、五万二千石の藩政をめぐって、激しく狼火のろしを打ちあげた人々の中へと
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『陣中狼火のろしの法』のひとつで、凧糸のつりにむずかしい呼吸のあるもの、また、これをあげるにも相当のわざがあって、八歳や十歳の子供などにあつかえるようなしろものじゃない。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
今度の狼火のろしは九月三日で、その間に二十五年の歳月があった。
海陸呼応する合図の狼火のろし
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たとえば、吾々が戦時につかう狼火のろしというものでも、無智な戦国時代には、狼のふんを干し蓄えておいて燃したものです。狼糞ろうふんの煙はふしぎに高く真っ直ぐに揚がるから。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本職で行こうじゃねえか、本職でよ。——おめえも次席家老のせがれだっていうが、役名は火術自慢の松代藩でお狼火のろし方っていうんだろう。おれも火いじり商売だ。同じ果し合いを
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駒脚を止めて見廻したとたんに、ぐわあん! ——と一声の狼火のろしがとどろいた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丹羽、佐久間などの隊が、箕作みつくり城へ攻めかかった合図を、信長は狼火のろしで知ると
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、狼の火と書いて、のろしと読ませるのもそのわけですが、今ではあて字にもなりません。長崎からはいる蘭薬らんやくを二、三種あわせると無音狼火のろしでも音のするのでも自由に簡単に造られる。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堀尾茂助ほりおもすけの打ち揚げた狼火のろしの音がその上で響いた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国境で哨兵しょうへい狼火のろしをあげた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狼火のろしである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)