狂気きょうき)” の例文
旧字:狂氣
そしてその結論としての国民の覚悟かくごについて述べだしたが、もうそのころには、かれはかなり狂気きょうきじみた煽動せんどう演説家になっていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
人々はもはや耳かきですくうほどの理性すら無くしてしまい、場内を黒く走る風にふと寒々とかれて右往左往する表情は、何か狂気きょうきじみていた。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
朝月あさづきは、狂気きょうきのようになって、いななきながら、その周囲をかけめぐった。そこを通りかかったのは七、八人の明兵みんぺい
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
肉体の生命せいめい奇蹟的きせきてき無事ぶじだったかわりに、あの少年の精神せいしん狂気きょうきあたえられたのではないか? 少女たちはにじ松原まつばらからめいめいのみやこへ帰った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと同時にいまひとりのブランドは、コスターを小わきにかかえて洞から出た。それをやらじとバクスターが狂気きょうきのごとくブランドにからみついている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そのときあのやぐらの上のゆるいふくの男はにわかに赤いはたをあげて狂気きょうきのようにふりうごかしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おりから夕餉ゆうげぜんむかおうとしていたおれんは、突然とつぜんにしたはし取落とりおとすと、そのまま狂気きょうきしたように、ふらふらッと立上たちあがって、跣足はだしのまま庭先にわさきへとりてった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なるほど、そう言えば、普通ふつう憑きもののした人間は、もっと恍惚こうこつとした忘我の状態でしゃべるものである。シャクの態度には余り狂気きょうきじみた所がないし、その話は条理が立ち過ぎている。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
狂気きょうき? そうだ。この神尾喬之助は、発狂しているに相違ない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は俄かに赤い旗をあげて狂気きょうきのようにふりうごかしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、うったえるごとく、泣くごとく、狂気きょうきになってさけんでいたのは、さきつかた、躑躅つつじさきたちの、かの源氏閣閣上げんじかくかくじょうにおいて、咲耶子さくやこのために、その鷲をうばわれた浜松城はままつじょうの小さきお使番つかいばん星川余一ほしかわよいちだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と次郎が狂気きょうきのようにさけんだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
子どもらばかりボートの中へはなしてやってお母さんが狂気きょうきのようにキスを送りお父さんがかなしいのをじっとこらえてまっすぐに立っているなどとてももうはらわたもちぎれるようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
狂気きょうきのようになって、咲耶子は武者ばしりの柵際さくぎわびまわった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子どもらばかりのボートの中へはなしてやって、お母さんが狂気きょうきのようにキスをおくりお父さんがかなしいのをじっとこらえてまっすぐに立っているなど、とてももうはらわたもちぎれるようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)