熊襲くまそ)” の例文
「よくまあ、あんな熊襲くまそみたいな人のところへ行く気になつたことねえ」と、親類ぢゆうの小母さん連は、よく照子をからかつた。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
仲哀天皇ちゅうあいてんのうは、ある年、ご自身で熊襲くまそをお征伐せいばつにおくだりになり、筑前ちくぜん香椎かしいの宮というお宮におとどまりになっていらっしゃいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
インドチャイニース族の集合であるところの熊襲くまそが大和朝廷にしばしばそむいたのは新羅が背後から使嗾するのであると観破され
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何の、東北の熊襲くまそに、味噌みそも見識もあるものか。彼らも、力行実践でやって来たのだろう、そのときに、吾々も、一剣をもってむくえば足る」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(金石文には、浦襲とも見えている。これから推して熊襲くまそも、くま即ち山地を襲う人民の意に解したら面白いと思う。)
浦添考 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
われわれがまだこの花をえて賞美しなかった時代から、すでにこの付近の天然を占拠したこと、たとえば熊襲くまそ隼人はやとのごときものであったろう。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「鹿児島には、昔、土蜘味つちぐもという種族がいたらしいですね。熊襲くまそみたいな。やはり私達と同じで、洞窟に住んでいた」
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
熊襲くまそ征伐の時も天皇が自分を殺すために旅にだすのだと嘆き、東征の時にもいよいよ自分は生きて帰れぬ、天皇は自分を殺すツモリだと嘆いています。
第十二代景行けいかう天皇の御代になると、朝廷の稜威りようゐは国内に於ける群小の土豪どもを悉く平定せしめて、たゞ西に熊襲くまそ、東に蝦夷えぞの二族を残すだけになつた
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
『書紀』七や『豊後国風土記』には景行帝熊襲くまそ親征の時、五人の土蜘蛛つちぐも拒み参らせた。すなわち群臣に海石榴(ツバキ)のつちを作らせ、石窟を襲うてその党を誅し尽くした。
外は三韓の役あり、内は熊襲くまその変あり、しこうして禍は蕭牆しょうしょううちより起りて、忍熊おしくま王の反となる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
然るに情ない事に、記者は正しく熊襲くまその末裔と見えて、江戸ッ子のふう付きは一眼でわかるが、彼等の喰い物に対する趣味がどれ位高いかは、まだ充分に味わい出したことがない。
乙女のまよびきのごと、はた天つ水影の押伏せて見ゆる向津国むかつくにも御軍の威におそまつろひけむをおもふ時、われは端なくも土蜘蛛、熊襲くまそなんどの栄えたりし古の筑紫に身をおくがごとくて
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
第十二代の天皇景行の時代には、周芳すわ、豊前に反抗事件がおこった。熊襲くまそも反抗した。天皇は自分から乗りだして、これらの反抗分子と戦った。そのため、六年間、天皇は日向にとどまった。
ことごとくこれを捕えてお殺しになったとか、同じ天皇の熊襲くまそ御征伐の時にも、熊襲の娘を誘うて親を殺さしめ給うたとか、日本武尊やまとたけるのみこと出雲建いずもたけるを誅せられる時に、まず和睦して共にの川に水浴し
「君、君、僕の国だって熊襲くまそだからね。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
又は九州の熊襲くまそやからもありましょう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はじめ、目もまぶしいばかりの、さまざまのめずらしいたからがどっさりある。つまらぬ熊襲くまその土地よりも、まずその国をあなたのものにしてあげよう
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
奥州者といえば、熊襲くまそだのえびすだのと、仰っしゃる都会人みやこびとが、天狗をにうけているんだから恐れ入っちまう
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また十六歳の日本武尊やまとたけるのみことが女装して熊襲くまそを退治する話。この熊襲がいまわの言葉に、あなたのような強い人にははじめて会った。あなたの強さは日本一だからヤマトタケルと名のりなさいと云って死ぬ。
日本武尊やまとたけるのみこと熊襲くまそを退治していられるところとかいうような、勇ましい中にも、むごたらしいような石版絵が、西郷様の肖像とか高山彦九郎の書いた忠の字とかいうものと一緒に並んでいるのでしたが
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おん母上の皇后は、ついで熊襲くまそをも難なくご平定になって、いよいよ大和やまとにおかえりになることになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そんなことは、アイヌ族か熊襲くまそでも考えたことだろう。今日では、火術も進んでいます。高島秋帆しゅうはん、江川太郎左衛門、また同藩の佐久間先生、みな洋学にならっておる。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)