煩悩ぼんなう)” の例文
旧字:煩惱
きつかたき不足ふそくはせぬ。花片はなびらゆきにかへて、魔物まもの煩悩ぼんなうのほむらをひやす、価値ねうちのあるのを、わたくしつくらせませう、……おぢいさん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大日向の本願は、老少善悪のひとを選ばれず、ひたすら信心の心あついものをいとしみ給ふ。煩悩ぼんなう熾盛しせいの衆生をたすけ給はんが為の御心にてまします。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
境内きやうないに特種の理想を発達し来れり、而して煩悩ぼんなうの衆生が帰依するに躊躇ちうちよせざるは、この別天地内の理想にして、一度ひとたび脚を此境に投じたるものは、必らずこの特種の忌はしき理想の奴隷となるなり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
煩悩ぼんなうの塵うち払ひ、しづ/\と入日のかたに歩みつゝ
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんぢやの、おら嬢様ぢやうさまおもひかゝつて煩悩ぼんなうきたのぢやの。うんにや、かくさつしやるな、おらがあかくツても、しろいかくろいかはちやんとえる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
煩悩ぼんなう具足ぐそく衆生しゆじやうは、いづれにても生死をはなるる事かなはず、哀れみ給へ、哀れみ給へ。病悪の正因をぬぐひ去り給へ。大日向の慈悲じひを垂れ給へ」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
あへげば、紅火こうくわ煩悩ぼんなう』の血彩ちいろくんずる眩暈くるめきよ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鋳像家ちうざうかわざに、ほとけあかゞねるであらう。彫刻師てうこくしのみに、かみきざむであらう。が、ひとをんな、あの華繊きやしやな、衣絵きぬゑさんを、詩人しじん煩悩ぼんなうるのである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弥陀みだの本願には、老少善悪のひとをえらばれず、たゞ信心を要とするべし。その中へは、罪悪深重、煩悩ぼんなう熾盛しせい衆生しゆじやうをたすけんがための願ひにまします。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)