照添てりそ)” の例文
月影つきかげは、夕顏ゆふがほのをかしくすがれるがき一重ひとへへだてたる裏山うらやま雜木ざふきなかよりさして、浴衣ゆかたそで照添てりそふも風情ふぜいなり。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
輝く初夏しょかの空のした、際限なくつづく瓦屋根の間々あいだあいだに、あるいは銀杏いちょう、あるいはしいかし、柳なぞ、いずれも新緑の色あざやかなるこずえに、日の光のうるわしく照添てりそうさまを見たならば
その行く時彼の姿はあたかも左の半面を見せて、団欒まどゐの間を過ぎたりしが、無名指むめいしに輝ける物のただならず強き光は燈火ともしび照添てりそひて、ほとんただしく見るあたはざるまでにまなこを射られたるにあきれ惑へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と扇をきりりと袖を直す、と手練てだれぞ見ゆる、おのずから、衣紋の位に年けて、瞳を定めたそのかんばせ硝子がらす戸越に月さして、霜の川浪照添てりそおもかげ。膝立据たてすえた畳にも、燭台しょくだいの花颯と流るる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つぼみを含んだおもむきして、鸚鵡の雪に照添てりそふ唇……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つぼみふくんだおもむきして、鸚鵡あうむゆき照添てりそくちびる……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)