滋養じよう)” の例文
すべては水の中の気持で生きなければならない。向って来るものはみんな喰べて、滋養じようにして、私は逞ましい魚にならなければならない。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
不思議だろう! こんな泥みたいなかたまりから芽が出て来て、それからまた子を産むんだ、そしてそれが人間の口に這入って滋養じようになるんだ。
それは、会社かいしゃで、社長しゃちょうましてもらったようなぶどうしゅに、滋養じようになりそうな、にくのかんづめでありました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
滋養じよう物を取らなければならぬので、ぜにもないのに、いろいろなものを買って食った。こいふなうなぎ、牛肉、鶏肉けいにく——ある時はごいさぎを売りに来たのを十五銭に負けさせて買った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
たとえばある連中によれば『善悪は滋養じよう有無うむなり』と云うのです。が、またほかの連中によれば『善悪はあじわいにほかならず』と云うのです。それだけならばまだしも簡単ですが……
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
腸窒扶斯ちょうチフスかかりたるとき、先生、とくまげられ、枕辺まくらべにて厚く家人に看護かんご心得こころえさとされ、その上、予がみずからきたる精米せいまいあり、これは極古米ごくこまいにして味軽く滋養じようも多ければ
こんどはどんなたべものに、この三つの成分がどんな工合ぐあいに入っているか、それを云います。およそ、食物の中で、滋養じように富みそしておいしく、また見掛けも大へん立派なものはにわとりです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なんでも、日本人の体質には、動物性の滋養じようよりも植物性の滋養のほうが適するんだそうですよ。どうも僕たちも知らず知らずのうちに脂肪の強い物ばかりりすぎていたんですね。」
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
滋養じようスープ 冬 第二百八十 滋養スープ
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして滋養じようを与えるために白身の軽いさかなていると、復一は男ながら母性のいつくしみに痩せた身体もいっぱいにふくれる気がするのであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かあさんは、夕飯ゆうめし用意よういをして、おなかをすかしてかえってくる息子むすこっていられました。自分じぶんにはなくても、子供こどもには、べつに滋養じようになりそうなおさかながついています。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
何となれば只今前論者の云われたようなトラピスト風の人間というものは今日全人類の一万分一もあるもんじゃない。やっぱりあたり前の人間には肉類は食料として滋養じようも多く美味である。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見渡すと靄はかなり晴れて川岸の丘にはまた先に櫟林のあるところまでは畑続きの平地で、如何にも滋養じようのありそうな黒土に野菜が緑の点状に無数に並んでおります。農家が四つ五つ見えます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)