浮動ふどう)” の例文
ここではあらゆるのぞみがみんなきよめられている。ねがいの数はみなしずめられている。重力じゅうりょくたがいされつめたいまるめろのにおいが浮動ふどうするばかりだ。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夜業やげうの筆をさしおき、枝折戸しをりどけて、十五六邸内ていないを行けば、栗の大木たいぼく真黒まつくろに茂るほとりでぬ。そのかげひそめる井戸あり。涼気れうきみづの如く闇中あんちう浮動ふどうす。虫声ちうせい※々じゞ
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
かのじょ羽織はおりや帯の色が、美しい雲のように、うずを巻いて、眼のまえに浮動ふどうするのが感じられただけだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
大陸たいりくは、たとへばあめうみうかんでゐるふねである。これが浮動ふどうさまたげゐるのは深海床しんかいしようからばされた章魚たこである。そしてこの章魚たこ大陸たいりく船縁ふなべりつかんでゐるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ある極限きよくげんまではかくして大陸たいりく浮動ふどうさゝへてゐるけれども、つひさゝれなくてあるひはなしたりあるひゆびつたりして平均へいきんやぶれ、したがつて急激きゆうげき移動いどうおこるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)