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油氣
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あぶらけ
其油氣のない
硬い
髮の
毛が、
何ういふ
譯か、
頭の
眞中で
立派に
左右に
分けられてゐる
樣を、
絶えず
眼の
前に
浮べた。
それは
油氣のない
髮をひつつめの
銀杏返しに
結つて、
横なでの
痕のある
皸だらけの
兩頬を
氣持の
惡い
程赤く
火照らせた、
如何にも
田舍者らしい
娘だつた。
掛て
上なと言れてハイと答へなし
勝手口より立出るは娘なる
可し
年齡まだ十七か十八
公松の常磐の
色深き緑の髮は
油氣も拔れど
脱ぬ
天然の
美貌は彌生の花にも増り又
中秋の
新月にも
劣ぬ程なる一個の
佳人身には
栲なる
針目衣を