水薬すいやく)” の例文
旧字:水藥
バッグもやはりひざをつきながら、何度も繰り返してこう言いました。それからテエブルの上にあった消毒用の水薬すいやくでうがいをしました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「こんど、をさましたら、この水薬すいやくまさなければならない。」とおもって、おかあさんはしょうちゃんのまくらもとに、くすりのびんをおきました。
幼き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その翌々日なりき、宮は貫一に勧められて行きて医の診察を受けしに、胃病なりとて一瓶いちびん水薬すいやくを与へられぬ。貫一はまことに胃病なるべしと思へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
早瀬はその水薬すいやく残余のこり火影ほかげに透かして、透明な液体の中に、芥子粒けしつぶほどの泡の、風のごとくめぐるさまに、莞爾にっこりして
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただの風邪だろうという診察をくだして、水薬すいやく頓服とんぷくを呉れた。彼はそれを細君の手から飲ましてもらった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
苦痛くつううすらげるのはなんためか? 苦痛くつうひと完全かんぜんむかわしむるものとうではいか、また人類じんるいはたして丸薬がんやくや、水薬すいやくで、その苦痛くつううすらぐものなら、宗教しゅうきょう
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「じゃともかくも頓服とんぷく水薬すいやくを上げますから」「へえどうか、何だかちと、あぶないようになりそうですな」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのはずでがす。隣家となりの隠居の溜飲りゅういんにクミチンキを飲ますんだって、メートルグラスでためした上で、ぴたり水薬すいやくの瓶に封。薬剤師そのせめに任ず、とる人を、人殺の相談に、わけなし血判。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美華禁酒びかきんしゅ会長ヘンリイ・バレット氏は京漢けいかん鉄道の汽車中に頓死とんししたり。同氏は薬罎くすりびんを手に死しいたるより、自殺の疑いを生ぜしが、罎中の水薬すいやく分析ぶんせきの結果、アルコオル類と判明したるよし。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
細君は水薬すいやくを茶碗へいで僕の前へ置いてくれたから、茶碗を取り上げて飲もうとすると、胃の中からげーと云う者が吶喊とっかんして出てくる。やむをえず茶碗を下へ置く。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浅黄の天鵝絨びろうどに似た西洋花の大輪おおりんがあったが、それではなしに——筋一ツ、元来の薬ぎらいが、快いにつけて飲忘れた、一度ぶり残った呑かけの——水薬すいやくの瓶に、ばさばさと当るのを、じっみつめて立つと
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)