水無月みなづき)” の例文
與謝野寛さんだかゞ歌つた「富士が嶺はをみなも登り水無月みなづきの氷の上に尿垂るてふ」といふ感がしてならなかつた。
陰暦水無月みなづきの十一夜、月いと美しき夜なりき。夕方たづね来し花京君の主唱にて、一燈光あざやかなる下、字を結び、興を探りて、互に吟腸を披瀝しぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
されば大河を前に、うつろひ易い人生の姿を見てあれば、「水無月みなづきや人の淵瀬の大井川」(蓼太れうた)といつたやうな感じに打たれないものはなかつたであらう。
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
明治年代にも「文月ふみづき水無月みなづきと書いて消しにけり 麦人」という句があって、『春夏秋冬』撰の時、碧虚両氏の間に議論を生じ、結局採用にならなかったと伝えられている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
暑さはかねをとかすともいうべきほどの水無月みなづきに、遊船宿と行燈あんどうにしるせる店へ。ツト入り来たりし男年ごろ二十四五なるべく。鼻筋とおり色白く。目もとは尋常に見ゆれども。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
久し振りの水無月みなづき十三日の月輪を空に見たが、先頃から雨天がちに、下闇したやみはじめじめ泥濘ぬかるんでいるし、低い道には思わぬ流れが出来ていたりして、主従十三騎の落ちて行く道は
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でしょう、空色と白とを打合わせの、模様はちょっと分らなかったが、お太鼓たいこに結んだ、白い方が、腰帯に当って水無月みなづきの雪をいたようで、見る目に、ぞッとしてれ違う時、その人は
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しもつけと紫陽花と咲く水無月みなづきのとき色の谷るり色の谷
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
昭和六年六月十六日 水無月みなづき会大会。安田銀行。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
また水無月みなづき祇園會ぎおんゑや、しら山鉾やまぼこ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
わが水無月みなづきのなどかくはうつくしき。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
いえ、いえ、これは「水無月みなづき」が
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
水無月みなづき テオドル・ストルム
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
また立ちかへる水無月みなづき
沙羅の花 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
きやう水無月みなづき祇園会ぎをんゑ
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
さは水無月みなづきのつくゑに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
淡墨たんぼくのような雲のうちに、水無月みなづき十三日の月がにじんでいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えうこそしか、水無月みなづきまつりのひと
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
今歳ことし水無月みなづきのなどかくは美しき。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
水無月みなづきくらき夜半よはの窓に
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
燕はかける、水無月みなづき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みづうはぬるむ水無月みなづき
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)