“歌劇(オペラ)” の例文
表門の潜戸(くゞりど)ばかりを開(あ)けた家中は空屋敷(あきやしき)のやうに寂(しん)として居る。自分は日頃から腹案して居る歌劇(オペラ)脚本の第一頁に筆を下して見た。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
そして音楽が流行になってるというので、それに興味をもっているらしく装(よそお)っていた。ことにある新しい歌劇(オペラ)のことを盛んに口にしていた。
シューベルトは歌劇(オペラ)、交響曲(シンフォニー)、弥撒(ミサ)、室内楽、歌曲(リード)、その他あらゆる形式の作曲をし、かつてその天才の泉の涸渇(こかつ)する気色も見せなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
歌劇(オペラ)から歌詞即ち心理的要素の大部を除いて、立派な芸術的存在となり得た舞踊劇は、確かに、「心理的要素を主とする演劇」に一大教訓を垂れたことになる。
演劇一般講話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それではせめて、クルーゲルの沙翁舞台とも——と嘆願したのであったが、それさえ一蹴されて、ついにその劇場は、バイロイト歌劇(オペラ)座そっくりな姿を現わすに至った。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
貞奴の後に、彼地で日本女性の名声を芸壇にひびかしているのは歌劇(オペラ)の柴田環(しばたたまき)女史であろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
而(しか)して彼が従来の歌劇(オペラ)を捨て、其の芸術綜合の信念と目的とを表現したる初めての獅子吼(ししく)『タンホイゼル』は、実にこの惨憺たる悲境に於て、彼の頭脳に胚胎(はいたい)したりし者なる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
臺所(だいどころ)から縁側(えんがは)に出(で)て仰山(ぎやうさん)に覗(のぞ)き込(こ)む細君(さいくん)を「これ平民(へいみん)の子(こ)はそれだから困(こま)る……食(た)べものではないよ。」とたしなめて「何(ど)うだい。」と、裸體(らたい)の音曲師(おんぎよくし)、歌劇(オペラ)の唄(うた)ひ子(こ)と言(い)ふのを振(ふ)つて見(み)せて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「君は僕に前もって知らせなかったですね。そんなことがあってはいけない。僕のより前に採用した歌劇(オペラ)をまず上演してほしいものです。」
二十一曲の歌劇(オペラ)、四十一曲の交響曲(シンフォニー)、五十八の教会音楽、七十余の管弦楽曲、四十に余る室内楽、九十八のピアノ曲、四十二のヴァイオリン・ソナタ
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
そこで歌劇(オペラ)なるものゝ芸術としての存在価値は、屡々問題にされるのであります。
演劇一般講話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
若し此れを歌劇(オペラ)の舞台の幕明きに前奏されるプレリュードやウーヴ※ルチュールの管弦楽を聞くやうな心持にも譬へるならば、かの『刺青』の書き出しの如きは正(まさ)しく三味線の前弾(まへび)きであらう。
谷崎潤一郎氏の作品 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ベートーヴェンの歌劇(オペラ)『フィデリオ』はきたならしい音楽だ。わざわざ退屈するためにあんなものを聴きに行くなんておよそわけの判らん話さ。
この人はスペインの近代歌曲をよく歌うくせに、フランスの一番洒落(しゃれ)た新しい歌曲も巧みに歌い、その上フランスやイタリーの歌劇(オペラ)はお手のものだった。
理論の方なら少しは本も讀みましたし、又古來の有名な管絃樂(サンフオニイ)や歌劇(オペラ)なぞも實例だけは聽いて居ましたから、少しは纏まつたお話が出來るかと思ふですが、技藝の方なら全く私は不適任ですよ。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
それが歌劇(オペラ)といふ形式になる。
演劇一般講話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
しかし多少慰められたことには、劇を軽蔑(けいべつ)してるそれらの音楽家らが皆、劇のために書いてることだった。歌劇(オペラ)を書かない者は一人もなかった。
按摩さん、何んかお聞かせしましょうか、歌劇(オペラ)のアリアはもう飽々(あきあき)したでしょう、……そうじゃない? ……でも今日はお客様だから、客間でカルメンでもないでしょう。
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
芝居と詩との関係は、歌劇(オペラ)と音楽との関係と同じである。ベルリオーズが言ったように、娼家と恋愛との関係である。
十一歳で聖譚曲(オラトリオ)を書き、十二歳で歌劇(オペラ)を作曲し、十四歳で交響曲(シンフォニー)を作った早熟のモーツァルトは、数学には熱中することが出来たが、少年らしい遊戯に対しては、少しも興味を持たなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
彼らは話される対話の痕跡(こんせき)を歌劇(オペラ)から注意深く消し去って、モーツァルトやベートーヴェンやウェーバーらの作品のために、自己流の叙唱(レシタチーヴ)を書いた。
クリストフは、飾りたてた発声法をもってる大仰(おおぎょう)な甘ったるい節回しのイタリー歌劇(オペラ)を重んじなかったが、それらの詩劇をもまた同様に重んじなかった。
それは歌う歌劇(オペラ)と語る演劇(ドラマ)との中間を占むる音楽的戯曲の一形式——自由な言葉と自由な音楽とを結合した芸術——現代の芸術家がほとんど思いついていないものであって
彼を驚嘆せしめた最初の歌劇(オペラ)の作者たるフランソア・マリー・ハスレルが、やって来ることになった。そして自作の音楽会を指揮することになった。町じゅうの者が興奮した。
どうしても先刻の節(ふし)が思い出せなかった。でも祖父から注意されてるのに得意になって、自分の美しい声をほめてもらいたく思いながら、歌劇(オペラ)のむずかしい歌を自己流に歌った。
シャツ一枚になって、家の中を上下に往(ゆ)き来し、アリアに歌劇(オペラ)の身振りを伴わせて、響きわたる好きな低音(バス)で、しきりなしに歌っていた。——その後で、彼は出かけた、どんな天気にも。
歌劇(オペラ)の四幕目になって、テナー歌手と主役女優(プリマドンナ)にその最も鋭い声を発揮させる機会を与えんために、免れがたい破局が恋人らの上に落ちかかってきた時、彼は息がつまるような気がした。
白チョッキをつけ赤い襟飾(えりかざり)をした、若い、脂(あぶら)ぎった、頭の禿(は)げた、つやつやした顔色の役人が、彼の手を親しく握りしめて、前日の歌劇(オペラ)のことを話しだした。クリストフは用件をくり返した。
私は今、歌劇(オペラ)を書いています。