方丈はうぢやう)” の例文
方丈はうぢやうの室に近い書斎の隅には新らしい薄縁うすべりが一枚あり、その上には虫干しでも始まつたやうに古手紙が何本も並んでゐた。先生は僕にかう言つた。
くもあみをむすびて九二諸仏を繋ぎ、燕子つばくらくそ九三護摩ごまゆかをうづみ、九四方丈はうぢやう九五廊房らうばうすべて物すざましく荒れはてぬ。
いづれも天竺てんぢくの名木で作つたものでせう、色彩しきさい剥落はくらくしてまことに慘憺さんたんたる有樣ですが、男女二體の彫像てうざうの内、男體の額にちりばめた夜光の珠は燦然さんぜんとして方丈はうぢやうの堂内を睨むのでした。
方丈はうぢやう聞かれ何事なるやとたづねらるゝに水呑村百姓三五郎と申者御逢を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をぎ一四六尾花のたけ人よりもたかく生茂おひしげり、露は時雨めきて降りこぼれたるに、一四七三つのみちさへわからざる中に、堂閣の戸右左みぎひだりたふれ、方丈はうぢやう一四八庫裏くりめぐりたるらう
願ひ度と申いでしが百姓の分際ぶんざいにて御ぢきに御目通りは叶ひがたしと申せしかばかくの仕合なりと言に方丈はうぢやうは其者是へとほせと申さるゝゆゑ侍者じしやの坊主立出たちいでコレ各々方おの/\がたしづまられよコリヤ百姓和尚樣をしやうさまあひなさるゝに因て此方へ通るべしと言を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かけ貴殿きでんには何人にていづれへ通り給ふや當時たうじ本堂は將軍しやうぐん若君わかぎみ天一坊樣の御座所ござしよと相成り我々晝夜相詰まかりありととがむれば浪人は拙者せつしやは當院の住職ぢうしよく天忠和尚の許へ相通る者なりと答ふ然ば暫時ざんじ此處に御休息ごきうそくあるべし其段そのだん拙者共より方丈はうぢやうへ申通じうかゞひし上にて御案内ごあんないせんといふに彼浪人も夫はもつともの事なりと自分じぶんも番所へ上れば番人は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)