敷布しきふ)” の例文
そして背嚢から小さな敷布しきふをとり出してからだにまとい、さむさにぶるぶるしながら階段にこしかげ、手をひざに組み眼をつむりました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あるあさ、おはつ台所だいどころながしもとにはたらいていた。そこへ袖子そでこった。袖子そでこ敷布しきふをかかえたままものわないで、あおざめたかおをしていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そればかりか、妹はうちのなかをきれいにかたづけたり、寝床ねどこに白いきれいな敷布しきふをきちんとかけたりしました。
すると、敷布しきふれても、からだのぬくもりで、かわくのに手間はかからない。これまでの経験で、そうすりゃきっと、かあさんに見つからずにすむだろう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
人は生活を赤裸々にして羽毛蒲団はねぶとんの暖さと敷布しきふ真白ましろきが中に疲れたる肉を活気付けまた安息させねばならぬ。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
烟りは椿つばきはなびらずいからまつてたゞよふ程濃く出た。それをしろ敷布しきふうへに置くと、立ちがつて風呂場ふろばへ行つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『悲しんではいけない、ね、』と、多緒子が白い敷布しきふの上にうつ伏すやうになつて、うるんでる大きな瞳を、叱るやうにして見つめると、あわてゝ荷物をとりながら
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「何んにも云はなかつたの、私は顏に敷布しきふをかぶせて、壁の方を向いてゐたわ。」
最初さいしょのうちこそおはつ不思議ふしぎそうにしていたが、袖子そでこから敷布しきふってみて、すぐにその意味いみんだ。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
机の上には快樂の女神バツカントの小さな石像が、牧場とも見る緑の敷布しきふの上に眞白く立つて居る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
おりおり、北風が、冷たい敷布しきふのようにからだを包んで、どこかへ持って行こうとする。狐か、それともあるいは狼が、指の間やほっぺたに息をふきかけるようなことはないか。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
そして、またかべぎわのところには、七つの小さなどこが、すこしあいだをおいて、じゅんじゅんにならんで、その上には、みんな雪のように白いあさ敷布しきふがしいてありました。
私は彼女を二度と伯母とは呼ぶまいとかつて誓つた。だが今となつてその誓ひを忘れて、破ることが罪だとは思はなかつた。私の指は、敷布しきふの外に出てゐる彼女の手をしつかりと握つてゐた。
みんなの前の木のえだに白い一枚の敷布しきふがさがっていました。
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また、ある晩は、ちゃんと、適当のへだたりを置いて、へいかどに陣取っている夢を見た。その結果、なんにも知らずに、眠ったまま、敷布しきふの中へしてしまったのである。彼は眼をさました。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ごちそうを食べおわると、かわいい、きれいなふたつのベッドに白い敷布しきふをかけてもらって、ふたりはそのなかに横になりました。ふたりは、まるで天国てんごくにでもいるような気持ちでした。
また敷布しきふのように白かった。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)