揚屋町あげやまち)” の例文
「島原のくるわ、今は衰へて、曲輪くるわの土塀など傾き倒れ、揚屋町あげやまちの外は、家もちまたも甚だ汚なし。太夫の顔色、万事祇園に劣れり」
鉄漿溝おはぐろどぶというのについて揚屋町あげやまちの裏の田町の方へ、紺足袋に日和下駄ひよりげた、後の減ったる代物しろもの、一体なら此奴こいつ豪勢に発奮はずむのだけれども、一進が一十いっし二八にっぱちの二月で工面が悪し
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むむ美登利さんはな今の先己れの家の前を通つて揚屋町あげやまち刎橋はねばしから這入はいつていつた、本当に正さん大変だぜ、今日はね、髪をかういふ風にこんな嶋田しまだに結つてと、変てこな手つきして
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道の片側は鉄漿溝おはぐろどぶに沿うて、廓者くるわものの住んでいる汚い長屋の立ちつづいた間から、江戸町一丁目と揚屋町あげやまちとの非常門を望み、また女郎屋の裏木戸ごとに引上げられた幾筋の刎橋はねばしが見えた。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貴方が御勘当になればわたくしはあなたをベロ/\めますよ、あなたが御勘当になれば揚屋町あげやまちの裏あたりの小粋な処へ世帯しょたいをお持たせ申して、私が仕送りをして御不自由はおさせ申しませんで
揚屋町あげやまちとほり伝馬てんまかついではしるなんて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
涙ながらに「日本色里の総本家」という昔の誇りをとむろうて、「なかちょう」「中堂寺ちゅうどうじ」「太夫町たゆうまち」「揚屋町あげやまち」「しもちょう」など、一通りその隅々まで見て歩くのはまだ優しい人で
むゝ美登利みどりさんはないまさきれのうちまへとほつて揚屋町あげやまち刎橋はねばしから這入はいつてゆつた、本當ほんとうしやうさん大變たいへんだぜ、今日けふはね、かみういふふうにこんな島田しまだつてと、へんてこなつきをして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道の片側は鉄漿溝おはぐろどぶに沿うて、廓者くるわものの住んでゐる汚い長屋の立ちつゞいた間から、江戸町一丁目と揚屋町あげやまちとの非常門を望み、また、女郎屋の裏木戸ごとに引上げられた幾筋の刎橋はねばしが見えた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)