あしら)” の例文
然し人一倍義侠心の強い彼は、し京太郎にとって悪い奴なら、自分がなんとかあしらってやろうと考え、そのまま浜の方へけだした。
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すると浅果あさはかな男心は直ぐ我楽多がらくたのやうな、ぞんざいなあしらぶりを見せて、うかすると神様の傑作に対して敬意を失するやうな事になる。
「分っている、分っている……」周馬も、ここでお十夜に、グズられては困るので、またほどよくあしらいながら、腰をすえて飲み始めた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猛犬にみ付かる 猛犬に取り巻かれたけれども私は眼が痛いものですからどうも常のように犬をよくあしらうことが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
米友は唯々いいとしてお角のあとに跟いて行きました。お角はまた米友を従者でもあるかのようにあしらって、先へさっさと歩いて袖切坂を上って行きます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僕は見合結婚だって然うでしょうと言ってやりたかったが、憤らせてしまうと菊太郎君が迷惑するから、御無理御道理ごもっともあしらって、間もなく逃げて来た。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ただのタイピストに軽くあしらわれて、次第次第に熱をあげて行ったのは何んとしたことでしょう。
お葉は相変らず鼻であしらっているので、重太郎はいよいいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
、どうあしらっても別条ないのろまとでもお考えですかな。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と軽くあしらってさそいを入れた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
得て、お上の者というつらへ、よい程なあしらいをして見せると、ツケ上がりたがるものなので、ひとまずさかねじをくれてゆくと
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり馬鹿の物知りというようなものであるというその素振といい言い様といい、どうも私に対して少し嫉妬しっと心を持って居るように見えたからよい程にあしらって置きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
六年生は案外なような顔をしたが、軽くあしらって置いて、突然いきなり組みついて来た。相撲となると、僕も多少自信がある。投げて置いて逃げ出すことを考えた。揉み合いが始まった。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
政治上の問題でもあるかと興を持っていたところが、つまらない奥州の一商人の紹介なので、宗盛は見下げたように、途中からそら耳であしらっていたが
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目を白黒していた。奥さんは好い加減にあしらって送り出した後、直ぐに閣下に相談した。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また、理由のない駄々をこねて、人困らせをするのかと、お吉がよい程にあしらっていると、すねて後ろ向きになったお米の目に、涙がいっぱいに溜っている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何だい? 鼻であしらうのか?」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かわす、跳びさがる——、さすがの彼も新九郎の獅子奮迅ししふんじんあしらい疲れて、またジリジリと浮腰になった刹那、木の根の濡苔ぬれごけを踏んでふらりとなったところへ
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝、あいみじんのあわせえりに、白粉っぽい物がついていたので、お仙は、一日ふさいでいた。男が、軽くあしらえばあしらうほど、女はれて、粘って、そして、錯覚に疲れた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とがめ立てをするとか、いきり立って斬りかかるとかいう奴は、かれにとって、まだあしらいいいが、いやにねッとりした旅川周馬、白いのか黒いのか、腹の底が知れないので
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、軽くあしらいつつ、老巧に相手の疲れを誘って、その呼吸の急きこんできた頃合をきッかけに
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、「また、なにしにやって来たのか」と、うるさく思い「ままよ、その場その場であしらってやるばかり……」と、不敵な気を持ち直すまでの、ほんの寸時をいていただけなのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今も、彼のつかれを知らない精力に大勢が辟易顔へきえきがおして、次に名ざしを受けるのを恐れるかのようにみな隅へ寄り、古参の太田黒兵助ひょうすけがまるで子どもみたいにあしらわれているのを見ていたところだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺は一切、いくさに介入いたしません。楠木殿へも同様なあしらいです。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)