はらい)” の例文
旧字:
今思えばれは茶屋でもトックにしって居ながら黙って通して、実はその盗品の勘定もはらいの内に這入はいって居るに相違ない、毎度の事でおきまりの盗坊どろぼうだから。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はらいはもうみんな済んだのかい」と宗助は立ちながら御米に聞いた。御米はまだ薪屋まきやが一軒残っていると答えた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いけません。おはらいでなきゃアあとへお帰んなさい。」とおっしゃった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また今更いまさらかんがえれば旅行りょこうりて、無惨々々むざむざあたら千えんつかてたのはいかにも残念ざんねん酒店さかやには麦酒ビールはらいが三十二えんとどこおる、家賃やちんとてもそのとおり、ダリュシカはひそか古服ふるふくやら、書物しょもつなどをっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
引っ張っとくわけにも行きませず、家主の方もどうかしなければならず、今月の末になると米薪こめまきはらいでまた心配しなくっちゃなりませんから、算段さんだん出掛でかけたんです
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
軽井沢へ避暑の真似をして、旅宿やどはらいにまごついたというのではない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分はその夕方宿のはらいを済まして母や兄といっしょになった。三人は少し夕飯ゆうめしおくれたと見えて、ぜんを控えたまま楊枝ようじを使っていた。自分は彼らを散歩に連れ出そうと試みた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)