はたき)” の例文
旧字:
あとへもう一度はたきを掛けて、縁側をき直そう、と云う腹で、番手桶に水を汲んで控えていて、どうぞ御安心下さいましッさ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はたきを持つやら、ほうきやら、団扇うちわかざしているものやら、どこにすきがあって立ち込んだか、うぐいすがお居間の中に、あれあれという。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
島か、みつか、はたきを掛けて——お待ちよ、いいえう/\……矢張やっぱりこれは、此の話の中で、わにに片足食切くいきられたと云ふ土人か。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その中にやさしき顔のかの烏帽子かぶれるはたきをば、国麿の引取りて、背後うしろかたに居て、片手を尻下りに結びたる帯にはさみて、鷹揚おうよう指揮さしずするなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
厚紙もて烏帽子えぼしを作りてこうむり、はたきを腰に挿したるもの、顱巻はちまきをしたるもの、十手を携えたるもの、物干棹ものほしざおになえるものなど、五三人左右に引着けて、かれは常に宮のきざはしの正面に身構えつ
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにもう内が台なしですからね、私が一週間も居なかった日にゃ、門前雀羅じゃくらを張るんだわ。手紙一ツ来ないんですもの。今朝起抜けから、自分ではたきを持つやら、掃出すやら、大騒ぎ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてその国麿はと想う、かれはいま東京に軍人にならむとて学問するとか。烏帽子えぼしかぶりて、はたきりしかの愛らしき児は、煎餅せんべいをば焼きつつありとぞ。物干棹ものほしざお持てりしは、県庁に給仕勤むるよし。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとは往来ゆききがばったり絶えて、魔が通る前後あとさきの寂たるみちかな。如月きさらぎ十九日の日がまともにさして、土には泥濘ぬかるみを踏んだ足跡もとどめず、さりながら風は颯々さつさつと冷く吹いて、はるかに高い処ではたきをかける。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)