戦袍せんぽう)” の例文
するとあたかも白鷺しらさぎの大群のような真白な軍隊が道をはばめて待っていた。見れば、姜叙、楊阜以下、すべて白い戦袍せんぽうに白い旗をかかげて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漢語の所謂いわゆる戦袍せんぽうで、斎藤実盛の涙ぐましい談を遺したのも其の鎧直垂に就いてである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また関興やそのほかの旗本は、みな天逢てんぽうの模様のある赤地錦あかじにしき戦袍せんぽうを着、馬を飛ばせば、さながら炎が飛ぶかと怪しまれた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの良い槍、良い剣、良いほこ、良いかぶと、良い戦袍せんぽう、良い馬、そしておびただしい車馬に積んできた食糧や宝は、すべて皆、汝たちに与えられる物だ。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくどい原色は嫌いなのだろう、服地も白麻のすそみじかな戦袍せんぽうで、紅梅織こうばいおり打紐うちひもを腰帯とし、美しい長剣をつるし、青と白との縞の脚絆きゃはんという軽快さ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、そこから味方の馮習ふうしゅうの陣まで走るあいだに、戦袍せんぽうの袖にも、馬の鞍にも、火が燃えついていた。いや走る大地の草も空の梢も火となっている。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたぶとりな肉塊ししむら濃緑こみどり緞子どんす戦袍せんぽうでくるみ、かしらには黒紗くろしゃ卍頭巾まんじずきん、それには金色の徽章きしょうがピカと光っている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「曹操何ものぞ。きずえるのを待ってはいられない。すぐわしの戦袍せんぽうかぶとをこれへ持て、陣触れをせいっ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山野に出れば、寒気はことに烈しかろうと想像されるので、将士はみな戦袍せんぽうの下に綿衣を厚く着こんだ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両人は、黒ずくめの戦袍せんぽう(よろい)と黒駒を与えられた。使用の武器は、たんぽ槍(穂先を羅紗でくるんで玉とした物)で、それにたっぷり石灰がふくませてある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱いかぶと、朱地金襴きんらん戦袍せんぽう朱柄あかえの槍、朱い幟旗しきを揃えて、八卦はっけ吉瑞きちずいにかたどって陣列を立て、その中央に、大将曹操をかこんで、一そく、大地を踏み鳴らして入城した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草の上に、戦袍せんぽうを敷き、袁紹は仰向けに寝かされた。——にぶい眸に、夕日が映っている。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいとし万里小路惟房卿までのこうじこれふさきょうをお使いとして、微臣信長に、密勅を賜わったが、今また、信長上洛じょうらくの催しを叡聞えいぶんあらせられて、ひそかに、優渥ゆうあくなる御綸旨ごりんじと、金襴きんらん戦袍せんぽうとを賜わった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日になると、関羽は、緑の戦袍せんぽうを着、盛冠花鬚せいかんかびん、一きわ装って小舟にのった。供の周倉は、面はみずちのごとく青く、唇は牙をあらわし、腕は千斤も吊るべしと思われる鉄色の肌をしている。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操も舌を巻いて、即座に彼を召抱え、白金襴しろきんらん戦袍せんぽうに名馬を与えた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、鮮やかな錦の戦袍せんぽうと黄金のよろいとを、王双に賜わった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「丞相、丞相。戦袍せんぽうのお袖に火がついていますぞ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)