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懌
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よろこ
ふりがな文庫
“
懌
(
よろこ
)” の例文
彼の
電鈴
(
でんれい
)
を鳴して、火の
傍
(
そば
)
に寄来ると
斉
(
ひとし
)
く、唯継はその手を取りて
小脇
(
こわき
)
に
挾
(
はさ
)
みつ。宮は
懌
(
よろこ
)
べる気色も無くて、彼の為すに任するのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
所詮
(
つまり
)
周三がお房を
懌
(
よろこ
)
ぶ意味が違つて、一
個
(
こ
)
の
物
(
ぶつ
)
體が一
人
(
にん
)
の婦となり、
單純
(
たんじゆん
)
は、併し
價値
(
かち
)
ある製作の資
料
(
れう
)
が、意味の深い心の
糧
(
かて
)
となつて了つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
全体予の事を、人々が女に眉毛を読まれやすいと言うを、いかにも眉毛が鮮かなと讃めてくれると思うたが、拙妻聞いて更に
懌
(
よろこ
)
ばぬから、奇妙と
惟
(
おも
)
いいた。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
さすがの燕王も心に之を
悪
(
にく
)
みて色
懌
(
よろこ
)
ばず、風声雨声、竹折るゝ声、
樹
(
き
)
裂くる声、
物凄
(
ものすさま
)
じき天地を
睥睨
(
へいげい
)
して、惨として隻語無く、王の左右もまた
粛
(
しゅく
)
として
言
(
ものい
)
わず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
座に着きし初めより始終
黙然
(
もくねん
)
として不快の色はおおう所なきまで
眉宇
(
びう
)
にあらわれし武男、いよいよ
懌
(
よろこ
)
ばざる色を動かして、千々岩と山木を等分に憤りを含みたる目じりにかけつつ
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
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彼女は口をきわめて雷師匠を
罵
(
ののし
)
った。まえにも云う通り、小左衛門は手堅い人物であるので、ふだんから自分の手習い子が遊芸の稽古所などへ通うのをあまり
懌
(
よろこ
)
ばないふうであった。
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
然るに自分は労を憚らずして往く。是は確に先生の一讚詞に値するとおもつた。さて事果てて後、還つて先生を見ると、先生は色
懌
(
よろこ
)
ばざる如くであつた。そしてかう云つた。足下は無情な
漢
(
をとこ
)
だ。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
遇
(
ぐう
)
することおおよそこの類であった分けても彼が年若い女弟子に親切にしたり稽古してやったりするのを
懌
(
よろこ
)
ばずたまたまそういう疑いがあると
嫉妬
(
しっと
)
を
露骨
(
ろこつ
)
に表わさないだけ一層意地の悪い当り方を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
人間これを承って
懌
(
よろこ
)
ばず、いくら面白く威勢よく暮したってただ三十年では詰まらないやと
呟
(
つぶや
)
いた。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
哀悼
(
あいとう
)
愁傷、号泣慟哭、一
枝
(
し
)
の花に涙を
灑
(
そそ
)
ぎ、一
縷
(
る
)
の香に
魂
(
こん
)
を招く、これ必ずしも先人に奉ずるの道にあらざるべし。五尺の男子、空しく児女の
啼
(
てい
)
を
為
(
な
)
すとも、父の霊
豈
(
あに
)
懌
(
よろこ
)
び給わんや。
父の墓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かくなりてより彼は
自
(
おのづか
)
ら唯継の面前を
厭
(
いと
)
ひて、寂く
垂籠
(
たれこ
)
めては、随意に物思ふを
懌
(
よろこ
)
びたりしが、図らずも
田鶴見
(
たずみ
)
の
邸内
(
やしきうち
)
に貫一を見しより、彼のさして昔に変らぬ一介の書生風なるを見しより
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
口には笑えど、目はいささか
懌
(
よろこ
)
ばざる色を帯びて、
出
(
い
)
で行く姑の後ろ影
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
俗伝にはかの時
仏
(
ぶつ
)
竜王が己れを
蓋
(
おお
)
いくれたを
懌
(
よろこ
)
び、礼に何を遣ろうかと問うと、われら竜族は常に
金翅鳥
(
こんじちょう
)
に食わるるから、以後食われぬようにと答え、仏すなわち彼の背に印を付けたので
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
貫一は
懌
(
よろこ
)
ばざる色を
作
(
な
)
してこれに
応
(
こた
)
へたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
懌
漢検1級
部首:⼼
16画
“懌”を含む語句
悦懌
捫懌