懇請こんせい)” の例文
その一方、大学に懇請こんせいして、火口底かこうていに果してラジウム二百グラムが投げこまれてあるのかどうかをしらべて貰った。これは案外苦もなく分った。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つぎやうや主人しゆじんかへつた。巡査じゆんさはなしをしてたがときはもう被害者ひがいしやからの申報書しんぱうしよ分署ぶんしよ提出ていしゆつされてあつたのでさら分署長ぶんしよちやう懇請こんせいしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
数日過ぎると、溝口伊予は再び仙石家を訪れて来て、どうしても自斎を断念しきれない主人丹後守の懇請こんせいを告げた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
差当さしあたりこの病を医すべき適切なる薬餌やくじを得、なお引続き滞岳たいがくして加養せんことを懇請こんせいしたれども、かれざりしかば、再挙の保証として大に冀望きぼうする所あり
脇坂わきざか部隊の戦傷勇士佐伯軍曹が、本町有志の熱心な懇請こんせいによって、今日午後一時から処女会の講堂で実戦談を行なわれることになったというビラがはりだしてあった。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
アルサスの小さな町から狂犬にまれたという九歳の子供が母親に伴なわれてパリに出て来て、その母親からパストゥールに治療を懇請こんせいしたという偶然の機会がめぐって来ました。
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)
そして特に小半次に懇請こんせいされて、その晩は泊るつもりの八五郎と、たつた七人だけになつた時、主人丹右衞門が世にも不思議な手段で慘殺されるといふ、大變な騷ぎが起つたのでした。
で前の晩は、諸鳥歓喜充満せりまで、文の如くに講じたが、の席はその次じゃ。則ち説いて曰くと、これは疾翔大力さまが、爾迦夷るかい上人しょうにんのご懇請こんせいによって、直ちに説法をなされたとうじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その懇請こんせいに耳を貸しながら、かげでこっそり贈り物をのぞいてみて、鰹節一連とはもってのほかだ、とにわかに態度を一変して底意地のわるさをムキ出しにするなぞということが考えられるであろうか。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
第三は、いわは中間派で、情理をつくして留任を懇請こんせいし、それがしりぞけられた場合にはストライキもやむを得ない、という意見であった。この意見の主張者は、とくにきまった顔ぶれではなかった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
法力の試みを懇請こんせいするほかに智慧の浮かぶゆとりはなかった。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
○末次君探幽たんゆう菊寿童きくじゅどうの事。(懇請こんせい
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、ついに王進も、父子の懇請こんせいれて、その日の出立を見合せ、あらためて、師弟の約を、ここに結んだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初は、断っておられたが、懇請こんせいもだし難く、光秀様も遂にを出で、朝倉家に随身なさる事になった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん、すでに大坂表からも、秀吉の名をもって再三、景勝に懇請こんせいが来ていたのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に、弁次郎幸村が、秀吉の意をうごかそうとして、若い情熱を耳朶じだに染めながら、ひるみなく自己の意見と、懇請こんせいとを述べるあいだ、秀吉は、聞き惚れるように、眼をほそめた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)