惜氣をしげ)” の例文
新字:惜気
其中そのうちには、さすが御大名丈おだいみやうだけあつて、惜氣をしげもなく使つかふのがこの畫家ぐわか特色とくしよくだから、いろ如何いかにも美事みごとであるとやうな、宗助そうすけにはみゝあたらしいけれども
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
他目よそめにもかずあるまじき君父の恩義惜氣をしげもなく振り捨てて、人のそしり、世の笑ひを思ひ給はで、弓矢とる御身に瑜伽ゆが三密のたしなみは、世の無常を如何に深く觀じ給ひけるぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
以前いぜん卯平うへいであればさういふあぢ普通ふつうかつ佳味うまかんずるはずなのであるが、數年來すうねんらい佳味うま醤油しやうゆ惜氣をしげもなく使用しようしてくちにはおそろしい不味まづさをかんぜずにはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
拭ひ主個あるじ親子に禮をのべ和吉を引連ひきつれ立出ながら跡へ心ののこりけるが見返り/\路次口ろじぐちへ出でゆく姿を娘もまた殘り惜氣をしげに見送りける斯くて長三郎は戸外おもてへ出ながら思ひつゞける娘がことあゝいふ女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蕾のくちびる惜氣をしげもなく喰ひしばりて、噛み碎く息の切れ/″\に全身の哀れを忍ばせ、はては耐へ得で、體を岸破がばとうつ伏して、人には見えぬまぼろしに我身ばかりのうつゝを寄せて、よゝとばかりに泣きまろびつ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)