ひつ)” の例文
されば凡百の道徳は、其の成立の上に於て、少くとも兩樣の要件を具足するをひつとすと見るを得む。兩樣の要件とは何ぞ。一に曰く、至善の意識也。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
正に骨味ほねみけづるが如くあれほどひつ死に眞劍しんけんあらそたゝかはなければならないとは! さう言えば、むかしあらそ將棋せうきやぶれていて死んだわか棋士きしがあつた。
芭蕉翁がおく行脚あんぎやのかへるさ越後に入り、新潟にひがたにて「海にる雨やこひしきうき身宿みやど寺泊てらどまりにて「荒海あらうみ佐渡さどよこたふ天の川」これ夏秋の遊杖いうぢやうにて越後の雪を見ざる事ひつせり。
否、たゞに要せざるのみならず、しかき不快なる文字もんじはこれを愛の字典の何ペエジに求むるも、決して見出すこと能はざるに至るやひつせり。然れども斯の如きは社会に秩序ありてあへて許さず。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
是より水上にいたらば猶斯の如き所おほきやひつせり、此に於て往路をりてかへり、三長沢口にはくし徐計をなすべしと云ひ、あるひただちに此嶮崖けんがいぢて山にのぼり、山脈をつたふて水源にいたらんと云ひ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
方今校刻の業盛に興つて、某会某社と称するもの指かゞなふるにいとまあらざる程である。若しを投じ盟に加はつてゐたら、立どころに希覯きこうの書万巻を致さむことも、或は難きことをひつとせぬであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
芭蕉翁がおく行脚あんぎやのかへるさ越後に入り、新潟にひがたにて「海にる雨やこひしきうき身宿みやど寺泊てらどまりにて「荒海あらうみ佐渡さどよこたふ天の川」これ夏秋の遊杖いうぢやうにて越後の雪を見ざる事ひつせり。