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御情
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おんなさけ
今、この瞳に宿れる
雫は、母君の
御情の露を取次ぎ参らする、
乳の
滴ぞ、と
袂を傾け、差寄せて、
差俯き、はらはらと落涙して
元より
御憎悪強き
私には
候へども、
何卒是は前非を悔いて自害いたし候
一箇の
愍なる女の、
御前様を
見懸けての
遺言とも
思召し、せめて
一通り
御判読被下候はば、未来までの
御情と
妾
去る日
烏円めに、無態の恋慕しかけられて、
已に
他が
爪に掛り、絶えなんとせし玉の緒を、黄金ぬしの
御情にて、不思議に
繋ぎ候ひしが。
彼時わが
雄は
烏円のために、非業の死をば遂げ給ひ。
妾こそは中宮の曹司横笛と申すもの、
隨意ならぬ世の義理に隔てられ、世にも厚き
御情に心にもなき
情なき事の
數々、只今の御身の上と聞き
侍りては、悲しさ
苦しさ、
女子の狹き胸一つには納め得ず
進申樣天一坊樣御身分の儀は
只今の書付にて
委しく御承知ならんが御腹の儀御
不審御
尤ともに存候されば拙者より
委細申上べし
抑當將軍樣
紀州和歌山加納將監方に御部屋住にて渡らせ給ふ
節將監妻の
召使ふ
腰元澤の
井と申
婦女の
上樣御情懸させられ御胤を