待合まちあは)” の例文
それのみならず去年の夏のすゑ、おいと葭町よしちやうへ送るため、待合まちあはした今戸いまどの橋からながめたの大きなまるい/\月を思起おもひおこすと、もう舞台は舞台でなくなつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
粗末そまつに致したる儀に聞えもわるく其の上世間へパツと露顯ろけん致しては奉公ほうこうも出來ぬ故彼是と心をいためながら今日まで待合まちあはせて居ましたが今日うけたまはればお前樣へ公儀おかみより下され候由に付右の御談おはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
他の時なればうるさき混雑こんざつやと人をいとおこるべきに、ただうれしくてこらへられず、車をりて人のすまゝに押されて、言問団子ことゝひだんごの前まではきしが、待合まちあはす社員友人の何処いづこにあるや知られず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
美登利みどりはさることこゝろにとまらねば、最初はじめ藤本ふぢもとさん藤本ふぢもとさんとしたしくものいひかけ、學校がくかう退けてのかへりがけに、れは一あしはやくて道端みちばためづらしきはななどをつくれば、おくれし信如しんによ待合まちあはして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
学校の帰り道には毎日のやうに待乳山まつちやま境内けいだい待合まちあはせて、人の知らない山谷さんや裏町うらまちから吉原田圃よしはらたんぼを歩いた………。あゝ、おいと何故なぜ芸者なんぞになるんだらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)