弊害へいがい)” の例文
如何いかんとなればとかく何事にしても弊害へいがいあれば弊害そのもののみを攻撃しないで、それに随伴ずいはんする事なれば何事によらず攻撃こうげきしやすいものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「やり方によっては何でも弊害へいがいがある筈だ。それじゃ野球は何うだ? 野球は? 野球で死ぬことがあるけれど、その為め野球はいけないとは言えまい?」
妻の秘密筥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
中津の旧藩にて、上下の士族が互に婚姻こんいんよしみつうぜざりしは、藩士社会の一大欠典にして、その弊害へいがいはほとんど人心の底に根拠して動かすべからざるもののごとし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これがほかの社会だと弊害へいがいがあると言っても程度が知れているが、軍隊の下剋上だけは全く恐ろしいよ。鉄砲てっぽうをぶっ放す兵隊を直接にぎっているのは下級将校だからね。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しか從來じゆうらい其麽そんなことは滅多めつたになく、別段べつだんみとむべき弊害へいがいともなふのでもないのであつた。それで普通ふつうどのうちでも彼等かれら滿足まんぞく分量ぶんりやう前以まへもつ用意よういしてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こうした弊害へいがいはみな道義上の個人主義を理解し得ないから起るので、自分だけを、権力なり金力なりで、一般に推し広めようとするわがままにほかならんのであります。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
運動を為し過ぎるよりは学問を為し過ぎる方がいけない。運動の弊害へいがいよりは学問の中毒の方が恐ろしい。如何いかに運動をっても、これがために未だ死んだ者あるを聞かない。
運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
そういう流行がる程度に達すると、一方に弊害へいがいの生ずるのは止むを得ないところであった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僕も本来なら血族結婚の弊害へいがいを説破すべき身の上で血族結婚の媒妁人は出来んと断然謝絶すべきだが、大原君の父が僕を指名して頼もうといい出したのは深い心があるように思われる。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この政党関係のためにいかなる弊害へいがいこうむって居るかということは今更ここで例をあげて申しあげるまでもなく、演説会やその他で長年の間わたくしが、いや、わたくしではありませんでした
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その弊害へいがいたるや、はなはだしいもので、こんな事件さえおこしている。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆる黄金崇拝おうごんすうはい物質的の米国などと綽名あだなされてあるこの国民が奢侈しゃし贅沢ぜいたく弊害へいがいおちいる傾向が割合いに少ない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかしながら熟考すると、如何いかにするも欧州の如き一夫一婦制こそしかるべきで、マホメット教的の一夫多妻制には、その正義の観念に矛盾すると共に、また幾多の弊害へいがいが伏在する。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
かくす如き民族は政治上の目的のために作った一種の仮装談かそうだんであるならば、その用い所を選ばねばただに効果が少いのみならず、かえって弊害へいがいあるを怖る。
民族優勢説の危険 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)