底冷そこび)” の例文
若し遊覧のためなら、何もわざ/\特別に底冷そこびえがすると言はれてゐる京都の冬を見舞ふ理由はなかつた。しかし京都の冬は思つたより好かつた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「好いところさ。東京市内にはとてもこんなところはない。しかしいやに寒いね。京都は底冷そこびえがするといったが真正ほんとうだ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
季節きせつが、ふゆからはるうつりゆく時分じぶんには、よくこんなようなしずかな、そして、底冷そこびえのするばんがあるものですが、そのよるは、まさしくそんなよるでありました。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けたたましく自動車の鳴りぜる音、咽喉太のどぶとの唸り笛さへり霜の夜凝よごりに冴えて、はた、ましぐらに何処いづくへか駈け去りぬ。底冷そこびえの戸の隙間風、さるにても明け近からし。
こちらの世界せかいでは、どんな山坂やまさかのぼくだりしても格別かくべつ疲労ひろうかんじませぬが、しかしなにやらシーンと底冷そこびえのする空気くうきに、わたくしおぼえず総毛立そうげだって、からだがすくむようにかんじました。
其処そこころがっている自然石のはしと端へ二人は腰を下ろした。夏の朝の太陽が、意地悪に底冷そこびえのする石の肌をほんのりとあたたなごめていた。二人は安気あんきにゆっくり腰を下ろしてられた。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
けたたましく自動車の鳴りぜる音、咽喉太のどぶとの唸り笛さへ、り霜の夜凝よごりに冴えて、はた、ましぐらに何処いづくへか駈け去り去りぬ。底冷そこびえの戸の隙間風、さるにても明け近からし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)