平素へいそ)” の例文
そのぞうがまた、平素へいそはごくあらっぽいのに、その時ばかりは、王子をにのせたまま、おとなしくのそりのそりと歩いているのではありませんか。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
畢竟ひっきょうこれは平素へいそ天然を楽しんでいるおかげであろう。実に天然こそ神である。天然が人生に及ぼす影響は、まことに至大至重しだいしちょうであると言うべきだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たい中根なかね平素へいそけつして成績佳良せいせきかりやうはうではなかつた。おれ度度たびたびきびしい小言こごとつた。が、人間にんげん眞面目しんめんもく危急ききふさいはじめてわかる。おれ中根なかね眞價しんか見誤みあやまつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いわんや吾人ごじん平素へいそまじわる人々について、はからざる事を見、予期せざる事を聞くこと少なくない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼等かれらとなり主人しゆじんたいして平素へいそむくいようとするよりも將來しやうらいおそれてる。彼等かれらみなひとしくしづかにおちついた白晝はくちうにはたつことが家族かぞくやすいことをつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昨今雑誌屋の店頭に並べられるものを見れば誰しもこの感を深くするであろう。わたくしは数年前から飯を炊く時、その煮える間鍋のそばに立って平素へいそ読まない書物を読むことにしていた。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)