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屠所
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としょ
ふりがな文庫
“
屠所
(
としょ
)” の例文
それは、雲霧の仁三と四ツ目屋の新助で、一番どんじりに、
屠所
(
としょ
)
の羊のように引っ張られて来たのはお人好しの率八です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と下枝は引立られ、殺気満ちたる得三の面色、こは殺さるるに
極
(
きわま
)
ったりと、
屠所
(
としょ
)
の羊のとぼとぼと、廊下伝いに歩は一歩、死地に近寄る哀れさよ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さあ、先生、それじゃお気の毒でも、いっしょにきてもらいましょうか」
屠所
(
としょ
)
にひかれる
羊
(
ひつじ
)
とは、このときの机博士のようなのをいうのであろう。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けれども志免警部と三人の刑事は私よりももっと失望したらしく、先程の元気はどこへやら、
屠所
(
としょ
)
の羊ともいうべき姿で、私の前に来て思い思いにうなだれた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しかし母はいかにも
慇懃
(
いんぎん
)
な様子で御主人に笑顔を見せていたので、もうなんの希望もないことを彼は見てとった。そして彼は
屠所
(
としょ
)
に
牽
(
ひ
)
かるる羊のように、夫人の案内に従っていった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
打ち
据
(
す
)
えられさえしても、
屠所
(
としょ
)
の羊のように柔順に黙ったまま、葉子にはまどろしく見えるくらいゆっくり落ち着いて働く愛子を見せつけられると、葉子の
疳癪
(
かんしゃく
)
は
嵩
(
こう
)
じるばかりだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
獣
(
けもの
)
にさえ
屠所
(
としょ
)
のあゆみと云う
諺
(
ことわざ
)
がある。
参禅
(
さんぜん
)
の
衲子
(
のうし
)
に限った現象とは認められぬ。応用は才人小野さんの上にも
利
(
き
)
く。小野さんは常から世の中に気兼をし過ぎる。今日は
一入
(
ひとしお
)
変である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
首を垂れて、いわば、
屠所
(
としょ
)
の羊といったぐあいにトボトボとついてゆく。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
皮仕事をする人間が
屠所
(
としょ
)
へ行って買って来るのですがその皮は誠に柔い。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
気狂
(
きちが
)
いじみているにかかわらず、この小坊主だけが、泣くにも泣かれない
面色
(
かおいろ
)
を遠くから見ると、ちょうど、ところが千住の小塚原であるだけに、さながら
屠所
(
としょ
)
の歩みのような小坊主の
気色
(
けしき
)
を見ると
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、今となっては、あらゆる悔いも
慚愧
(
ざんき
)
も及ばない。
屠所
(
としょ
)
の羊みたいな恰好で、市十郎は、
傲岸
(
ごうがん
)
なかれの姿に
従
(
つ
)
いて薄暗い梯子段を、元の裏二階へのぼりかけた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恩になる
姫様
(
ひいさま
)
、勇美子が急な用というに
悖
(
さから
)
い得ないで、島野に連出されたお雪は、
屠所
(
としょ
)
の羊の
歩
(
あゆみ
)
。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
アトから
考
(
かんげ
)
えるとあっしゃこの時にいい二本棒に見立てられていたんですなあ。
節劇
(
ふしげき
)
の文句じゃ御座んせんが「殺されるとは
露
(
つゆ
)
知らず」でゲス。
屠所
(
としょ
)
の羊どころじゃねえ。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
沢庵の後に
尾
(
つ
)
いて
悄々
(
しおしお
)
と歩く彼の足つきは、
屠所
(
としょ
)
の
羊
(
ひつじ
)
という形容をそのまま思わせる姿だった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
猿轡
(
さるぐつわ
)
のまま
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を横に、縦に十文字に人形を背負い、うしろ手に人形の竹を持ちたる手を、その縄にて
縛
(
いまし
)
められつつ出づ。肩を落し、首を垂れ、
屠所
(
としょ
)
に赴くもののごとし。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方は
屠所
(
としょ
)
の羊のように、又は死の投影のように
頸低
(
うなだ
)
れて、気絶した仲間を
扶
(
たす
)
け起し扶け起し、月光の真下で別れ別れになって行った。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ついには社に行くこと
屠所
(
としょ
)
の羊のごときものがあった。でもようやく何とか一年半余の連載を果した。それが「親鸞記」として社から出版の運びになったところで関東大震災が来た。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屠
漢検1級
部首:⼫
11画
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
“屠”で始まる語句
屠
屠蘇
屠殺
屠者
屠腹
屠殺場
屠牛
屠児
屠牛場
屠殺者