居睡ゐねむ)” の例文
その折松風氏は卓子テーブルに頬杖をついてこくり/\居睡ゐねむりをしてゐたが、店員が入つて来たのを見ると、急にしかつべらしい顔をして相手を見た。
平次は搜し疲れて、お通の茶店の奧に、うつら/\と居睡ゐねむりして居りました。
はひつてよう……いま前途ゆきさきいたのに、道草みちぐさをするは、とがさして、燒芋屋やきいもやまへ振返ふりかへると、わたしをしへたとき見返みかへつた、のまゝに、そといて、こくり/\とぬくとさうな懷手ふところで居睡ゐねむりする。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母親の居睡ゐねむりのひざからすべり下りて
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
持山 坊主居睡ゐねむりか。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
てきつた鎧戸よろひどに鳥打帽の頭を当てがつて、こくり/\居睡ゐねむりをしてゐたが、電車が大物だいもつを出た頃に、ひよいと頭を持ち直して、ぱつちり眼をけた。
ふと硝子の砕ける音がしたので、軍医は吃驚びつくりして眼をあけた。知らぬについうとうと居睡ゐねむつてゐたものらしい。
もし耶蘇があの年齢としで髪の毛の縮れた女房かないでも迎へてゐたなら、大抵の女は教会で欠伸あくび居睡ゐねむりかをするだらう。
蘆花君は薄暗いへやの隅つこで、膝小節ひざこぶしを抱へ込んだ儘、こくりこくりと居睡ゐねむりをしてゐる。附近あたりには見窄みすぼらしい荷物が一つきりで、何処にもその「善い物」は見つからなかつた。