屁理窟へりくつ)” の例文
……口先だけで屁理窟へりくつをこねるのがいくらうまくたって、実行力のない人間はあるかなきかのかげろうだ。なあ。そうだろう?
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
家門の紛争を増長せしめる類の弁舌や屁理窟へりくつは、仮に読書に由ってこれを学んだにしても、我々の名づけて学問と謂うものではないのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
完璧かんぺきを望んでは、いけませんなどと屁理窟へりくつ言って、ついに四升のお酒を、一滴のこさず整理することに成功したのである。
酒ぎらい (新字新仮名) / 太宰治(著)
何に限らず正当なる権利を正当なりなぞと主張する如きは聞いたふう屁理窟へりくつたてにするようで、実に三百代言的さんびゃくだいげんてき、新聞屋的、田舎議員的ではないか。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その実あいまいな屁理窟へりくつをつらね一刀両断に切ったのを、柳生三巌さんがんという御用剣術家、無門関あたりから引っ張り出し、三学の説をあみ出したそうだの。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
屁理窟へりくつばかりこねて、勤勉な農をダニのようにさまたげている——いわゆる駄農のたぐいには違いないようである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうして自分じぶんあたゝかしづかところして、かねめ、書物しよもつみ、種々しゆ/″\屁理窟へりくつかんがへ、またさけを(かれ院長ゐんちやうあかはなて)んだりして、樂隱居らくいんきよのやうな眞似まねをしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「駄目よ、そんな理窟は。何だか変ですよ。ちょうど藤井の叔父さんがふり廻しそうな屁理窟へりくつよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ジエィン、私は屁理窟へりくつを云つたり、何んでもつべこべきたがる子は、きらひです。それに、子供のくせに、そんな風に大人おとなにさからふなんて、全く許されないことです。どこかに腰をお掛け。
言ってやがるんだ。屁理窟へりくつばかりつべこべと並べやがって。いったい、てめえらはだれのお陰で育ったと思っているんだ? それも忘れやがって、わしに腹癒せがましいことができると思うのか?
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
突然の幸福のお見舞いにへどもどして、てれてしまって、かえって奇妙な屁理窟へりくつを並べて怒ったりして、折角の幸福を追い払ったり何かするものである。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうして自分じぶんあたたかしずかところして、かねめ、書物しょもつみ、種々しゅじゅ屁理窟へりくつかんがえ、またさけを(かれ院長いんちょうあかはなて)んだりして、楽隠居らくいんきょのような真似まねをしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
人の死んだ席で、なんの用事もせず、どっかと坐ったまま仏頂づらしてぶつぶつ屁理窟へりくつならべている男の姿は、たしかに、見よいものではない。馬鹿である。
緒方氏を殺した者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『そんな屁理窟へりくつわからん。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あんなのを、屁理窟へりくつというのですね。科学。どうして僕は、あれほど科学を畏怖いふしていたのだろう。子供がマッチを喜ぶたぐいでしょうかね。いじらしいものだ。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とわけのわからぬ負け惜しみの屁理窟へりくつをつけて痩我慢やせがまんの胸をさすり、家へ帰って一合の晩酌ばんしゃくを女房の顔を見ないようにしてうつむいて飲み、どうにも面白おもしろくないので、やけくそに大めしをくらって
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)