小紫こむらさき)” の例文
前にいった滝泉寺門前の料理屋角伊勢の庭内に、例の権八ごんぱち小紫こむらさきの比翼塚が残っていることは、江戸以来あまりにも有名である。
目黒の寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
第二の浅草の記憶は沢山たくさんある。その最も古いものは砂文字すなもじの婆さんの記憶かも知れない。婆さんはいつも五色ごしきの砂に白井権八しらゐごんぱち小紫こむらさきいた。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「色と意気地を立てぬいて、気立きだてすいで」とはこの事である。かくして高尾たかお小紫こむらさきも出た。「いき」のうちには溌剌はつらつとして武士道の理想が生きている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
そんなその、紅立羽あかたてはだの、小紫こむらさきだの、高原かうげん佳人かじん、おやすくないのにはおよばない、西洋化粧せいやうけしやう化紫ばけむらさき、ござんなれ、白粉おしろいはなありがたい……はや下界げかいげたいから、真先まつさき自動車じどうしやへ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「解つてゐるぢやないか。吉原の小紫こむらさきのところよ。——野郎の名前は權八だ」
男らしく思ひ切る時あきらめてお金さへ出来ようならお力はおろか小紫こむらさきでも揚巻あげまきでも別荘こしらへて囲うたら宜うござりましよう、もうそんな考へ事はめにして機嫌よく御膳あがつて下され
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前にいった瀧泉寺門前の料理屋角伊勢かどいせの庭内に、例の権八ごんぱち小紫こむらさき比翼塚ひよくづかが残っていることは、江戸以来あまりにも有名である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「解っているじゃないか。吉原の小紫こむらさきのところよ。——野郎の名前は権八だ」
博士はかせは、一くるまあとへのこらるゝさうです。紅立羽あかたては烏羽揚羽からすはあげはしろからして、おつにんてふ就中なかんづく、(小紫こむらさき)などといふのが周囲まはりについてゐますから、一寸ちよつとやまからさうにもありませんな。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をとこらしくおもときあきらめておかねさへ出來できようならおりきはおろか小紫こむらさきでも揚卷あげまきでも別莊べつさうこしらへてかこうたらうござりましよう、うそんなかんがごとめにして機嫌きげんよく御膳ごぜんあがつてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)