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小岩
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こいは
パレスといふ
小岩の
遊び
場に
身を
沈めてゐた
頃、
折々泊りに
来た
客なので、
調子もおのづから
心やすく
「
少しお
歩行きなさい、
白鷺は、
白金(
本家、
芝)の
庭へも
來ますよ。」つい
小岩から
市川の
間、
左の
水田に、すら/\と
三羽、
白い
褄を
取つて、
雪のうなじを
細りとたゝずんで
居たではないか。
こゝも
生活には
困つてゐたので、
母の
食料をかせぐため、
丁度十八になつてゐたのを
幸ひ、
周旋屋の
世話で、その
頃新にできた
小岩の
売笑窟へ
身売りをしたのである。
道子はふと
松戸の
寺に
葬られた
母親の
事を
思ひ
起した。その
当時は
小岩の
盛り
場に
働いてゐたゝめ、
主人持の
身の
自由がきかず、
暇を
貰つてやつと
葬式に
行つたばかり。