小山おやま)” の例文
今度小山おやま書店から出版された「妖魔詩話ようましわ」の紹介を頼まれて、さて何か書こうとするときに、第一に思い出すのはこの前述の不思議な印象である。
小山おやま(駿河駅)の富士紡工場破壊にはその惨状のはなはだしきを見せられた。汽車はきわめて緩い歩みをもって、仮修繕のレールの上をすべって行く。
震災後記 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
その又右衛門宗矩むねのりが、ちょうど三十歳となった年の六月には、主君家康の軍に従って、上杉景勝かげかつを討つため、野州小山おやまの陣中に、一旗本として働いていた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箱根火山彙かざんいを仰ぎ見て、酒匂さかわ川の上流に沿い、火山灰や、砂礫されきの堆積する駿河小山おやまから、御殿場を通り越したとき、富士は、どんより曇った、重苦しい水蒸気に呑まれて
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
博多の小山おやまという所の母方の御親戚に当るお婆さんの処へ行って、機織はたおりいなぞをお習いになりましたが、そのお婆さんが名高い八釜やかまのお師匠さんでしたのに
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
名田の大部分はむしろ関東にあって、その子孫は上州の太田おおたに住んで太田家となり、下野の小山おやまに住んで小山家となり、下総しもうさ結城ゆうきに行って結城家となったばかりでなく
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
清吉は一々いちいち姓を上げて、小山おやま、清水、林などといって、やはり眼を両手でこすって泣いている。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小山おやま駅で水戸の三人武者とも別れて、あとはただ一人、にわかにさびしくなれば数日以来の疲労も格段に覚えて、吾輩は日光の鮮かにてらす汽車の窓から遠近おちこちの景色を眺めていると
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
渋江氏の一行は本所二つ目橋のほとりから高瀬舟たかせぶねに乗って、竪川たてかわがせ、中川なかがわより利根川とねがわで、流山ながれやま柴又しばまた等を経て小山おやまいた。江戸をることわずかに二十一里の路に五日をついやした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
五品を与えたとあれど(『塵添壒嚢抄じんてんあいのうしょう』十九には如意にょい、俵、絹、鎧、剣、鐘等とあり、鎧は阪東ばんどう小山おやま、剣は伊勢の赤堀に伝うと)、巌谷君が、『東洋口碑大全』に引いた『神社考』には
わたくしの友人佐藤春夫さとうはるお君を介して小山おやま書店の主人はわたくしの旧著『すみだ川』の限定単行本を上梓じょうししたいことを告げられた。今日こんにちの出版界はむしろ新刊図書の過多なるに苦しんでいる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小山おやまへ近づいた灌木の茂みのかげから……。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
御殿場ごてんばにて乗客更に増したる窮屈さ、こうなれば日の照らぬがせめてもの仕合せなり。小山おやま山北やまきたも近づけば道は次第上りとなりて渓流脚下に遠く音あり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「はっ。……申しおくれました。実は、大御所家康公おおごしょいえやすこうの御一書をたずさえて、小山おやまの陣中からせ参りました」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)